I-B-10 |
小児における房室弁形成術 |
熊本市民病院小児心臓外科1),熊本市民病院小児循環器内科2)
塩川祐一1),鶴原由一1),馬場啓徳1),中村紳二2),八浪浩一2),後藤 啓2) |
【背景】小児における房室弁疾患は,形態的に多様であり,成長を考慮した形成が必要なことと相まって,外科治療を難しいものにしている.房室弁閉鎖不全症に対する形成術に検討を加え報告する.【対象】体心室房室弁に対し弁形成術を加えた26例を対象とした.心内膜床欠損症(AVSD)では,根治術後左側房室弁に対する形成術のみを対象とした.AVSD 9 例(完全型 8 例,中間型 1 例),VSD 5 例,単心室症(SV)5 例,ASD 3 例,BWG 1 例,川崎病の弁膜炎 1 例,純型肺動脈閉鎖症 1 例,その他 1 例であった.疾患別に房室弁の形態,術式と予後に対し検討を加える.【結果】(1)房室弁の形態 1.AVSD群:3 leaflet theoryにのっとりクレフト閉鎖が不十分であったものが 4 例,クレフト閉鎖基部の裂開 3 例,弁尖の低形成 1 例,その他 1 例.2.VSD,ASD群:前尖の逸脱が 5 例,後尖の逸脱 1 例,クレフト 2 例.3.SV群:すべて共通房室弁であり,弁輪拡大が 3 例,交連部開大 2 例,弁尖の低形成 1 例.4.BWG:弁輪拡大.5.弁膜炎:前尖中央部と両交連部,後尖の交連部の余剰弁組織による逸脱.(2)弁形成の方法と結果 1.AVSD群:クレフト残存に対する閉鎖の結果は良好であったが,弁尖低形成は不良.2.VSD,ASD群:人工腱索置換術 2 例,De Vega型の弁輪縫縮術(MAP)2 例,Kay-Reed型のMAP 6 例.ほとんどがmild以下となった.3.SV群:2 弁口化,弁輪縫縮術を行ったが中等度のAVVRが残存.4.BWG:弁輪縫縮で消失.5.人工腱索置換,edge to edge valvuloplasty,Kay-Reed型MAPでsevereからmildへ軽減.【考察】(1)AVSDでは根治術時にクレフトを先端まで閉鎖することが重要であり,残存クレフトによるMRは形成可能であった.(2)VSD,ASDに伴うMRでは,人工腱索置換術,弁輪縫縮術が有効であった.(3)弁膜炎では,いくつかの形成術の組み合わせにより良好な結果が得られた.(4)SVにおける房室弁形成術は今後の課題である. |
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