I-B-53 |
成人期を迎えた単心室血行動態心疾患患者の現状 |
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
元木倫子1),大内秀雄1),宮崎 文1),山田 修1),八木原俊克2),越後茂之1) |
【背景】心臓血管外科手術の技術進歩,病態のより詳細な解明により,単心室血行動態心疾患(UVH)患者の周術期死亡率は減少し,長期生存例が増加している.しかし,UVH患者の長期予後,また遠隔期の臨床像についてはまだ明らかでない.【目的】成人期を迎えた20歳以上のUVH患者の社会適応状況,医療状況を含めた臨床像を明らかにすること.【方法】当センターで20歳を超えて経過観察し得たUVH患者70人(年齢:20~53歳,平均27.4歳.性別:男性42,女性28例)について,後方視的に調査・検討した.【結果】70例中50例(71%)でFontan型手術に到達していた.到達しなかったのは20例で,その内訳はGlenn術 6 例,体肺短絡術10例,未手術が 3 例,弁置換 + Maze 1 例であった.就職者13例(19%)でFontan群 5,非Fontan群 8 例.その他アルバイト 8,学生12例.既婚者は 8 例(11%)でFontan群 2,非Fontan群 6 例.NYHA心機能分類ではclass 1:15例(21%),2:39例(56%),3:10例(14%),4/死亡:6 例(9%)であった.合併症では不整脈39例(56%),TIA・脳梗塞 8 例(11%),心房・血管内血栓 7 例(10%),その他に肺梗塞,痛風,脳膿瘍,PLE,喀血などを認めた.20歳到達後の死亡は 6 例であった.現在の内科的治療は,抗心不全療法(利尿剤,ACE-I/ARB,βブロッカー)が63%,抗不整脈療法(PMI含む)が27%,抗凝固療法が63%で施行されていた.Fontan群と非Fontan群間での生化学指標の比較では動脈酸素飽和度,血色素,ヘマトクリットにおいて差を認め,心肺機能ではFontan群では非Fontan群に比べ有意に最高酸素摂取量が高く,BNPが低かった.【まとめ】UVH患者の長期生存例の多くは,有症状で多様な合併症の既往があり,医療の継続を要する.加えて,低い就職/進学・結婚率はUVH患者の社会適応の難しさを示唆し,これら患者に対する長期的な医療技術の改善に加え,社会的サポート体制の確立も今後の課題である. |
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