I-B-56
30歳を超えた成人チアノーゼ性先天性心疾患症例の予後
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児循環器科1),東京女子医科大学循環器小児科2),千葉循環器病センター小児科3),国立循環器病センター小児科4)
坂崎尚徳1),中澤 誠2),丹羽公一郎3),越後茂之4)

【背景】中年期を迎えるチアノーゼ性先天性心疾患(以下CCHD)症例の予後についての検討は少ない.【対象と方法】CCHD症例 115例(男60例,最終受診年齢:中央値37歳,30~64歳)を対象とし,30歳以降の入院,死亡,全身合併症を調べた.さらに,30歳前後の臨床データを調べ,死亡や全身合併症との関連を調べた.【結果】(1)47例(40%)の症例が入院を要し,原因としては心不全が19例(16%),不整脈が13例(11%),全身合併症が21例(18%)であった.(2)10例が死亡し,死因は心不全 5 例,腎不全 2 例,多臓器不全 1 例,心室細動 1 例,突然死 1 例であった.(3)全身合併症としては,喀血(12%),脳梗塞(11%)が最も多かった.(4)死亡群は,生存群と比較すると,男性(OR 9.5 p = 0.03)が多く,CTRの平均値は有意に高く(71% vs 56%,p = 0.0006),MCVの平均値は有意に低く(78 vs 91,p = 0.006),BNPの平均値は有意に高かった(304 vs 93,p = 0.02).(5)出血性肺合併症例群は,肺合併症のない群と比較すると,閉塞性肺血管障害(OR 3.3 p = 0.03)例が多く,BNPの平均値が有意に高かった(234 vs 88,p = 0.03).(6)脳梗塞群は,脳梗塞のない群と比較すると,ヘマトクリット値の平均値が有意に高かった(64% vs 55%,p = 0.04).【結論】中高年期以降のCCHD症例に対しては,心不全管理に加え,喀血や脳梗塞の予防が必要である.

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