I-B-57
成人期のBland-White-Garland症候群(左冠動脈肺動脈起始)に対する手術症例の検討
東京女子医科大学心臓血管外科
米沢数馬,黒澤博身,新岡俊治,石山雅邦,坂本貴彦,山本 昇,松村剛毅,石橋信之,村田 明,保々恭子,豊田泰幸

【目的】Bland-White-Garland症候群(左冠動脈肺動脈起始症)は全先天性疾患中0.26%と非常にまれな疾患群である.さらに成人期に手術を施行する症例はまれである.今回当科にて成人期(15歳以上)に対し手術を施行した 5 例について臨床的検討を行った.【対象】1983年 7 月~2005年12月に15歳以上でBland-White-Garland 症候群の診断にて手術を施行した 5 例を対象とした.年齢は17~43歳(平均25.9 ± 9.4歳).性別はすべて女性であった.術前合併症として陳旧性心筋梗塞が 1 例,僧帽弁閉鎖不全合併は I°1 例,II°2 例,III°2 例,発作性心房細動が 1 例であった.【手術】直接的左冠動脈-大動脈再吻合法は 3 例で,2 例に竹内法を施行した.また 4 例に僧帽弁形成術(Reed法)を施行し,うち 1 例に人工弁輪を使用した.【結果】術中,術後の補助循環施行例はなかった.入院期間中に再手術は直接的左冠動脈-大動脈再吻合法の 1 例で,術後60日目に左冠動脈入口部狭窄に対し,patch拡大術を施行した.術後入院期間は24~94日(平均47.8 ± 25.1日)であった.退院後観察期間は53~256カ月(平均146.8カ月).遠隔期死亡を 1 例認め,上記再手術症例を術後 5 年目にIE疑いの敗血症により失った.【まとめ】成人期のBWG症候群に対しては冠動脈バイパス術が一般的である.しかし今回の検討症例はすべて直接的左冠動脈-大動脈再吻合法もしくは竹内法によるもので遠隔期においてもおおむね良好な結果を得た.成人期においてもtwo coronary systemの確立においては有用な術式であると考えられる.

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