I-B-60
成人先天性心疾患者のカテーテルインターベンション―どのように対応すべきか―
岡山大学医学部・歯学部附属病院循環器疾患治療部1),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科2),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科3)
赤木禎治1),大月審一2),佐野俊二3),岡本吉生2),笠原真悟3),石野幸三3),日置里織2),神吉和重3)

【背景】成人期に移行する先天性心疾患患者の増加やカテーテル治療対象の拡大に伴い,成人期の先天性心疾患に対するカテーテル治療も増加していくことが予想される.しかし成人先天性心疾患患者のカテーテル治療に関する適切な管理指針はいまだ確立していない.【目的】本領域において今後確立していかなければならない問題点を検討すること.【対象】20歳以上でカテーテル治療を受けた先天性心疾患患者.内訳は動脈管開存症28例,心房中隔欠損症 5 例,Fallot四徴症術後肺動脈狭窄症 6 例,冠動静脈瘻 1 例である.年齢は20~84歳,中央値41歳.これら40例の患者に対してコイルの再留置 4 回を含む44回のカテーテル治療を実施した.カテーテル治療に関与した問題点を以下の 4 点について評価した.【結果】(1)冠動脈病変:カテーテル治療前の冠動脈造影を25例に施行(50歳以上は全例)した.冠動脈の有意狭窄を 3 例に認め,うち 2 例はステント留置術が施行された.(2)高血圧:カテーテル治療前に降圧薬を使用されていたのは10例であった.動脈管コイル閉鎖術後の血圧上昇に伴い 4 例でカテーテル室で降圧薬を使用する必要があった.(3)不整脈:治療前に抗不整脈薬を使用されていたのは 3 例であった.カテーテル治療中に不整脈の増悪した例はなく,術後も同一の抗不整脈薬が使用された.(4)その他:治療の必要な糖尿病(3 例),高脂血症(4 例),高尿酸血症(3 例)を認めた.これらカテーテル治療に影響を及ぼす因子は40歳以上の患者でそれ以下の群と比較し有意に高率であった(p < 0.01).【結論】成人先天性心疾患患者のカテーテル治療では上記の問題に注意を払いながら管理を行う必要がある.特に40歳以降の症例ではその頻度が急増する.循環器内科医との共同作業のみでは対応に遅れが生じる可能性もあり,小児循環器医自身もこれら成人領域の疾患への修練が要求される.

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