I-B-65 |
Fontan手術後遠隔期にTCPC conversionを行った症例の検討 |
東京女子医科大学循環器小児科1),東京女子医科大学心臓血管外科2)
富松宏文1),中西敏雄1),中澤 誠1),黒澤博身2) |
【背景】F手術後遠隔期には右房の拡大や中心静脈圧の上昇などによる問題が生じることがあり,その対策としてTCPC conversion(Tc)が行われることがあるがその適応や時期はまだ一定ではない.【目的】Tcの適応と問題点などを明らかにするために,当施設での経験を検討した.【対象】2005年までにTcを行った11人.【方法】診療録から,原疾患,F手術の術式と手術時年齢,Tc施行時年齢,適応,Tc後の身体状況などを検討した.【結果】原疾患は,三尖弁閉鎖:4 人,無脾症:1 人,多脾症:2 人,その他:4 人.F手術時年齢は17歳(5~23歳),術式は心耳-肺動脈吻合:8 人,Björk:1 人,右房-肺動脈導管吻合:1 人,右房-右室グラフト吻合:1 人.Tcの年齢は,30歳(21~37歳),F手術からの期間は,15年(7~23年).Tcの適応は心房内血栓 6 人,導管狭窄 2 人,右左短絡 4 人など.Tc前の状態としてはNYHA IIが 6 人,IIIが 5 人.Tcと同時に施行された手術は,血栓除去:6 人,Maze:4 人,房室弁形成:5 人,ペースメーカ植込み:1 人.Tcの手術死亡は 2 人(18%),遠隔期(Tc後7.4年)死亡が 1 人.Tc後の状態は術前に比し改善が 5 人,不変が 2 人,増悪が 1 人,死亡 3 人.酸素飽和度は平均89から95%へ改善した.遠隔期死亡の 1 人はTc前から存在した肝硬変による消化管出血が死因であり,臨床症状が増悪した 1 人も肝硬変の進行に伴う低蛋白血症により慢性心不全状態が持続している.【考察,結語】F手術後遠隔期の問題に対する対策として,Tcは有用であるとの報告がある.今回の検討ではTc後も,それまでに進行した肝機能障害が非可逆的になっており,術後もQOLを著しく低下させている例があり,またそれが遠隔期死亡の原因となった例があった.Tcを考慮する時,心機能だけでなく他臓器の機能などについても注意を払いながら時期を決定する必要があると考えられた. |
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