I-B-67
成人期まで無治療で経過した複雑心奇形症例
岐阜県立岐阜病院小児循環器科1),岐阜県立岐阜病院小児心臓外科2)
坂口平馬1),後藤浩子1),桑原直樹1),桑原尚志1),渡辺成仁2),八島正文2),竹内敬昌2)

【はじめに】成人期の先天性心疾患の外科治療の介入は非常に難しい.手術侵襲と患者のQOLの向上のバランスを考慮して治療方針を検討しなければならない.今回われわれは小児期に手術適応なしと判断され成人期に達した 3 症例を経験したので報告する.〈症例 1〉21歳男性,situs inversus CTGA,VSD,ASD,MAPCAs,PH.〈症例 2〉33歳男性,Dx,AVD,MA,DORV,PS(valve).〈症例 3〉31歳女性,DIRV,DORV,PS(valve)心臓カテーテル検査,心肺運動負荷試験(CPX),呼吸機能検査などを検討した結果,患者様および家族と相談したうえで治療方針を決定した.【経過】症例 1 はQp/Qs = 3.6でCPXでのpeak VO2 = 18.7と低く,NYHA IIで,肺血流が多い血行動態が運動耐用能を低下させていると判断し,二期的にuniforcalizationとRastelli術を施行した.しかし術後VTから血行動態破綻し,その後DIC,ARDSを併発し永眠した.症例 2 はPS(valve)でPH(-)であったが右室機能が悪く,カテーテル検査中にもacidosisの補正が必要であった.まず心不全の治療が必要と判断し説明したが承諾が得られず経過観察中.症例 3 はカテーテル検査上,Fontan術を行うには問題なかった.しかし本人の挙児希望があり現在の血行動態とFontan循環とどちらが妊娠に有利かCPXで検討した.peak VO2 = 13.7と低値であった.【考察】血行動態の評価だけでは手術介入の決断は困難であり,全症例でCPXを施行したがpeak VO2は低値であった.今までの運動制限を考慮すると,筋力低下や呼吸機能の問題で正確に評価できていないと考えられた.今後当施設では嫌気性代謝閾値(AT)を指標に運動療法を行い,その後に運動耐用能を評価しようと考えている.

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