I-B-70 |
大動脈縮窄症における形態的な狭窄の程度と圧較差との関係について |
北海道大学大学院医学研究科小児発達医学分野
武田充人,村上智明,山澤弘州,八鍬 聡,上野倫彦 |
【背景・目的】大動脈縮窄症に対してステント植込み術が行われるようになったが,狭窄を解除し得る血管径についての報告はない.今回われわれは大動脈縮窄症における形態的な狭窄の程度と圧較差との関係について検討した.【対象】大動脈縮窄症(大動脈弓離断を含む)未治療例 2 例および術後例23例の計25例.検査時年齢0.8~29.8歳.BSA 0.4~2.3m2.【方法】カテ先マノメータ付きカテーテルを用いて上下行大動脈間の圧較差を計測した.IVUSを用いて大動脈縮窄部の収縮期血管内腔断面積(cross-sectional area,CSA,mm2)を求めた.大動脈造影側面像にて狭窄部径(S,mm)および横隔膜面での下行大動脈径(D,mm)を測定した.狭窄の程度の指標として,BSAで補正したCSA(CSA-index,CSA-I),BSA0.5で補正した狭窄部径(S-index,S-I),およびS/D比を用いた.これらの指標と圧較差の有無との関係からROC曲線を作成し,圧較差を鋭敏に反映する指標を比較検討した.また,圧較差を認めた群においてCSA-Iと圧較差との相関関係を求めた.【結果】圧較差を認めた群は 8 例,認めなかった群は17例で両群間で年齢,体表面積,心拍出量に有意差を認めなかった.CSA-I,S-Iは両群で有意差を認めた(p < 0.001,p = 0.004)が,S/Dは両群で有意差を認めなかった.ROC下面積はCSA-I 1.0,S-I 0.85,S/D 0.73と,CSA-Iが最も圧較差を鋭敏に反映した.CSA-I 79mm2/BSA未満では全例(n = 8)圧較差を認め,84mm2/BSA以上で全例(n = 16)圧較差を認めなかった.圧較差を認めた群でCSA-Iと圧較差は非常によく相関した(R = 0.9).【考案】圧較差を解除するために必要な血管径はBSAにより推測可能であり,CSA-Iとしておよそ80mm2/BSA〔血管径で10 ×(BSA)0.5mm〕である.大動脈造影からは圧較差を解除する血管径を推測するのは困難と思われる.【結語】大動脈縮窄症での圧較差は狭窄部の血管断面積に最もよく相関し,狭窄を解除し得る断面積は体表面積から予測できる. |
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