I-B-71 |
大動脈弓下狭小例に対する自己大動脈壁によるascending aortic extension法 |
社会保険中京病院心臓血管外科1),社会保険中京病院小児循環器科2)
櫻井 一1),阿部知伸1),加藤紀之1),澤木完成1),櫻井寛久1),杉浦純也1),松島正氣2),大橋直樹2),西川 浩2),久保田勤也2) |
【症例】2 歳女児.生直後に単心室疑いにて当院に紹介となり,UCGにて,DORV,multiple large VSDs,PA atresia,PDA,pulmonary coarctation(CoPA)と診断した.生後 2 カ月で右BT shuntを行い,その後PDA閉鎖のため左BT shuntを追加した.1 歳時の心カテーテル検査で,RpI = 1.61で,non-confluent PAとなっていた.1 歳半でASD作成,BDG,自己心膜パッチによる肺動脈形成術を行いconfluent PAとした.術後の心カテーテル検査で肺動脈の最狭窄部は1.7mmとなっておりバルーン拡大で2.9mmとやや広がった.2 カ月後再度バルーン拡大を行ったが拡大不十分のため,2 歳時TCPCを行った.【手術】大動脈弓部に送血管を挿入し体外循環を行った.肺動脈形成部は心膜パッチが内反して固定し,狭窄を来しているようだった.心停止下に上行大動脈を右下から左上方向に斜めに横断した.TCPC用の16mm Gore-Tex graftを斜めに横断し,左肺門部から右肺門部まで肺動脈を拡大しつつ吻合した.上行大動脈断端の中枢側は外彎側を,末梢側は内彎側を 7~8mm縫合して断端径を縮めたのち再吻合することで上行大動脈を延長し径を縮小した.最後にgraftとIVCを吻合してTCPCを完成した.【結果】翌日,人工呼吸器を離脱し,術後経過は良好であった.術後 1 カ月の心カテーテル検査では,CVP = 15mmHgでCoPAはなくなり大動脈弓下も拡大していた.【考察および結語】先天性心疾患では,もともと上行大動脈が太かったり,あるいは弓部再建術を行うことによる大動脈弓下狭小例があり,時に中心肺動脈狭窄や気管支狭窄を生ずることがある.本例でも太い上行大動脈と狭い弓部下が肺動脈狭窄の誘因と考えた.この手術的解除法として人工血管や自己肺動脈組織による弓部延長法が報告されているが,自己大動脈のみによる本術式は,大動脈径の縮小と延長および成長も期待できる有用な術式と考えられる. |
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