I-B-72 |
機能的単心室症に合併した大動脈縮窄,遠位大動脈弓低形成に対する胸骨正中切開,人工心肺非使用下の大動脈弓再建術 |
神奈川県立こども医療センター心臓血管外科1),神奈川県立こども医療センター循環器科2)
小坂由道1),麻生俊英1),武田裕子1),武藤康司1),林 憲一2),上田秀明2),柳 貞光2),中本祐樹2) |
【目的】当院ではフォンタン術を目標とする機能的単心室症が大動脈弓部病変を合併する場合,第一期手術(弓部再建と肺動脈絞扼術)を正中切開アプローチで行っている.腕頭動脈起始部周囲の視野が良好で左右中心肺動脈を直視下に置くことができる利点がある.アプローチの妥当性を検討する.【対象】2004年の 1 年間に経験した 5 症例.手術時平均年齢10(3~32)日齢.体重2.6(2.4~3.9)kg.弓部病変は遠位弓部低形成 4 例(左鎖骨下動脈起始異常合併;1),狭部限局の縮窄 1 例.心内病変は三尖弁閉鎖症 3 例(大血管転位症合併;2).僧帽弁狭窄症を伴う左室低形成 1 例.両房室弁左室挿入 1 例.【手術】正中切開の後,下行大動脈を可及的遠位側までyR離.遠位弓部低形成例では大動脈狭部を結紮した後,大動脈弓大彎側を左鎖骨下動脈基部から総頸動脈基部に切り込み,総頸動脈基部組織を用いてflap aortoplastyを行った.次に下行大動脈を単純遮断し動脈管を結紮切除した後,弓部小彎側と端側吻合した.狭部限局縮窄例は下行大動脈を単純遮断後,動脈管組織を切除し弓部と端側吻合した.右鎖骨下動脈起始異常を合併した 1 例はこれを切断,右総頸動脈に吻合し再建した.遮断中の脳および下半身の血流は両側橈骨動脈圧,2 極近赤外線分光モニター,足背動脈圧で評価した.【結果】全例人工心肺を用いずに修復した.遠位弓部再建の 4 例では大動脈弓遮断時間46 ± 2 分.手術時間177 ± 28分.術後脳障害,反回神経麻痺,乳び胸なし.術後カテーテル検査(4 例,4 ± 1 カ月後)で弓部大動脈に圧較差なし(2 ± 2mmHg).他の 1 例はエコー評価で狭窄なし.現在 4 例がグレン手術(Damus-Kaye-Stansel吻合を同時施行:2)を終了しフォンタン手術待機中.【結語】胸骨正中切開アプローチで人工心肺非使用下に大動脈弓再建術を行い良好な成績を得た.正中切開は大動脈弓部病変を伴う機能的単心室症に対する第一期手術のアプローチとして妥当と考える. |
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