I-B-73 |
機能的単心室を伴うB型大動脈弓離断症に対する胸骨正中切開アプローチ人工心肺非使用下弓部再建術 |
北海道大学病院循環器外科
若狭 哲,村下十志文,窪田武浩,杉木宏司 |
【背景】B型大動脈弓離断症(IAA-B)は上行大動脈が低形成であり,手術は人工心肺を用いた一期根治が主流である.しかし疾患によっては一期手術の適応とならない場合があり,こうした症例に対する人工心肺を用いた姑息術は新生児期の手術としては侵襲が小さいとはいえない.【症例】日齢22,体重3.3kgの男児.生後チアノーゼを認めIAA-B,TGA/VSD,straddling tricuspid valve,small RV(Fontan candidate)と診断された.血管造影では上行大動脈および左総頸動脈径はそれぞれ 6,3mmであった.手術は胸骨正中切開で行い,上行大動脈,弓部分枝,肺動脈,下行大動脈の十分なyR離の後上行大動脈をtest clampingし,実際に吻合する術野を展開したうえで右橈骨動脈圧が40~45mmHgと保たれることを確認し,人工心肺非使用下に下行大動脈と吻合した.遮断時間は28分であった.その後PABを行い(周径23mm,体重 + 20mm),手術を終了した.術後酸素化不良のため 4 日目に抜管した.その後の経過は良好で,術後18日目に退院となった.術後心エコーでbanding siteの流速は4.6m/sであり,心臓カテーテル検査でも吻合部圧較差を認めなかった.【考察】機能的単心室を伴う大動脈閉塞性疾患に対する姑息手術では,(1)後負荷を増大させず心機能を温存するための遺残狭窄のない弓部再建,(2)肺血流をコントロールし肺を保護するための十分なbandingが重要である.本症例では,人工心肺を使用せずとも脳血流を損なうことなく良好な術野を得ることができたが,これには適切な形態の遮断鉗子の選択,TGAという解剖学的要因が大きい.また,人工心肺の非使用は低侵襲であるとともに肺血管抵抗への影響が最小限となりtight bandingが可能であった.低形成な上行大動脈を血流を障害することなく部分遮断することは容易ではないが,test clampで可能と判断されれば本術式は非常に有用と考えられる. |
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