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I-C-16 |
実験的ラット肺高血圧における新規炎症マーカーHMGB1の関与 |
三重大学大学院医学系研究科小児発達医学1),三重大学大学院医学系研究科生理学2),三重大学大学院医学系研究科胸部心臓血管外科3),三重大学大学院医学系研究科麻酔科4)
澤田博文1),三谷義英1),丸山淳子2),早川豪俊1),大橋啓之1),新保秀人3),丸山一男4),駒田美弘1) |
【背景】HMGB1(high mobility group box-1)は新たな炎症マーカーとして注目されるサイトカインである.従来DNA結合蛋白として知られたが,近年,壊死細胞,活性化樹状細胞やマクロファージから放出され炎症性サイトカインとして働くことが明らかとなり,臨床医学では,敗血症における末期の致死因子としての働きが注目される.しかし,HMGB1の肺高血圧における役割は不明である.【目的と方法】7 週齢のS-Dラットにモノクロタリンを投与(60mg/kg,皮下注)し,投与前,投与後それぞれ,2,4,8,16,22日に,血清,心肺組織を採取し,右室肥大,血清HMGB1レベル(Westernblot),肺組織炎症細胞浸潤(ED1免疫組織染色),肺組織HMGB-1発現は免疫組織染色と多重蛍光染色を行い光学顕微鏡と共焦点顕微鏡にて解析した.【結果】右室肥大は16日から認められた(RV/LV + S:p < 0.01).肺マクロファージ浸潤は 8 日に増加し,16,22日ではさらに増加した(p < 0.05).血清HMGB1レベルは16日から増加した.肺組織HMGB1発現は,気道系上皮細胞(核),血管内皮(核)に認められたが,いずれも細胞質には認めなかった.血管中膜細胞では,核細胞質ともに低レベルの発現であった.16日と22日の肺組織中単核球では細胞質HMGB1陽性のものが多くみられた.多重蛍光染色による検討では 0 日のED1陽性細胞では,HMGB1発現は核に局在していたのに対し,16日では,細胞質にHMGB1の発現は局在していた.【結論】HMGB1は,そのレセプターとされるRAGEを介し,血管内皮細胞の接着因子発現を促すことや,幹細胞の遊走,血液凝固系にも関わることが報告される.本研究ではモノクロタリンラットの肺血管病変,肺高血圧,炎症細胞浸潤の進展と血清HMGB1レベル,肺マクロファージの細胞質HMGB1発現に関連が認められた.これらの結果は,肺高血圧血管病変におけるHMGB1の関与を示唆する. |
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