I-D-8
片側肺高血圧の診断,治療効果判定に肺血流シンチが有用だった 1 例
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学小児心臓外科2)
松永 保1),熊倉理恵1),岩本洋一1),石戸博隆1),竹田津未生1),先崎秀明1),小林俊樹1),朝野晴彦2),加藤木利行2)

【目的】arterial switch術後の患児で,左肺の肺高血圧(PH)と右肺動脈分岐部狭窄(RPPS)を合併した症例で肺血流シンチが診断と治療効果判定に有用だった 1 例を経験したので報告する.【症例】患児は,TGAと診断され,PAB,lt BT shunt後にarterial switchの手術を受けた.術後新エコーでRPPSが指摘され,新生児期より左肺の感染を繰り返し,左横隔神経麻痺を合併し,O2 sat 90%前後のためHOTを施行され退院した.生後 5 カ月肺血流シンチはR:L100:46で,心カテを施行され,LPAp 61/24(40)とPHを指摘され,RPPSに対し左肺の圧の軽減を目的にballoon angioplasty(BA)が施行された.カテ後も右室圧高値が続き,外来にてベラプロストが開始され,肺血流シンチはR:L100:81と左肺の血流が増加しPHの改善が示唆された.1 歳 6 カ月の時の心カテで,LPAp 53/12(15),Pp/Ps 0.6とPHを認め,RPPSに対するBAが再施行され,狭窄は残存していたがMPApは38/6(23)と低下した.2 歳 3 カ月の肺血流シンチで,R:L100:42と左肺の血流低下を認め,PHの進行が疑われた.心カテで,LPAp 49/9(27),Pp/Ps 0.6で,ベラプロスト,HOTに加えシルデナフィルを開始した.シルデナフィル開始後 6 カ月LPApは50/14(29)と高値のままだが,肺血流シンチはR:L98:100,1 年で64:100と左肺の血管抵抗の改善が認められた.【結論】一側のPHと反対側のPPSを合併した症例で,肺血流シンチが病態の把握とPHの進行の診断,薬物治療の効果判定に有用であった症例を経験した.肺血流シンチは,一側のPHを持つ症例では,左右の肺血流量比を知ることによりPHの状態を把握するのに有用な方法であった.

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