I-D-14
感染性心内膜炎に対する経食道心エコー図検査の意義
国立循環器病センター小児科
堀田智仙,北野正尚,林  環,元木倫子,吉田葉子,脇坂裕子,山田 修,越後茂之

【背景】感染性心内膜炎(IE)の診断における経食道エコー図(TEE)の有用性は広く認められている.しかし,小児では左心系心内膜炎,弁輪部感染が少ないこと,経胸壁心エコー図(TTE)の見やすさなどから,TEEの使用が少ない.当センターではIEを疑った場合,積極的にTEEを施行している.【目的】IEの診断を目的に施行されたTEE所見を確認し,その臨床的意義について考察する.【対象】2004年 8 月~2005年12月に当センターにてIEの疑いのためTEEを施行した10例(男性 5 例,女性 5 例).全例に心疾患に対する手術歴を有していた.検査施行時の年齢は 5~42歳(中央値20歳).【方法】基礎疾患,IEの診断確定の有無,TEEでのvegetation確認の有無,TTE所見などについて,診療録およびエコー検査レポートの所見を検討した.またビデオ保存してあるTEE所見の確認も行った.【結果】IEを疑いTEEを施行した10例中,最終的にIEと診断されたものは 8 例(可能性例を含む).そのうちTEEでvegetationを確認できたものは 5 例であった.TEE施行前にTTEで事前にvegetationを疑わせる陰影を認めていたものは 4 例あったが,いずれも診断確定には不十分な画像であった.弁輪部感染(弁周囲膿瘍や弁穿孔など)の合併症を認めた例はなかった.1 例で事前のTTEとTEEでvegetationを認めなかったが,その後のTTEでvegetationが確認された.2 例でTTEとTEEでvegetationを認めなかったが,血液培養陽性・ガリウムシンチ陽性などの所見よりIEと診断した.【まとめ】良好な画質のエコー図が得られやすいので,IEにおけるTEEの有用性は高いが,症例によっては偽陰性を生じる可能性もある.臨床的にIEの疑いが強い場合は,ガリウムシンチなどの検査を追加し,さらにTTE/TEEを反復して行うことが望ましい.

閉じる