I-D-66
ダウン症,非ダウン症の乳児VSD,PHの治療成績の検討
和歌山県立医科大学第一外科1),和歌山県立医科大学小児科2)
小森 茂1),平松健司1),西村好晴1),岩橋正尋1),柴田正幸1),湯崎 充1),岡村吉隆1),鈴木啓之2),武内 崇2),渋田昌一2)

【目的】乳児期のVSD,PHにおいて,ダウン症と非ダウン症での手術成績の検討.【対象と方法】1994年より教室で乳児期のVSD,PHに対して59例に根治術を施行した.ダウン症(D群)が13例(男児 7,女児 6),非ダウン症(N群)が46例(男児26,女児20)であり,平均年齢はD群4.5カ月,N群5.4カ月,平均体重はD群4,082g※,N群5,389g※であった.術前,術中,術後因子について両群で検討した(※有意差あり).【結果】術前心臓カテーテル検査において有意差を認めたのはmPAP,RVp/LVp,Rpであった.D群,N群の順でmPAPが48mmHg,31.5mmHg,RVp/LVpが0.87,0.66,Rpが8.8U,3.2Uであった.体外循環のデータでは有意差は認めなかった.術後の経過で人工呼吸管理の遷延がD群で認められ,挿管時間がD群で平均53時間,N群で18時間であった.そのためにICU stayもD群で有意差をもって長くなった.術死をD群の 1 例に認めた.術前より挿管され,ショック状態であった症例で,術前より肺病変の進行が想定された症例であった.体外循環からの離脱が,低酸素血症で困難でECMO装着下に管理した.しかし,低酸素血症は改善せず,12病日目に死亡した.【考察と結語】乳児期VSD,PHの治療成績をダウン症,非ダウン症で比較検討した.非ダウン症は大きな合併症を認めなかったが,ダウン症は術後難渋した症例も認められた.これは特に成長が悪く,肺動脈圧,肺血管抵抗が高い症例に多かった.術前よりかなり肺病変が進行している場合があり,適切な手術時期が重要であることが示唆された.また,術後長期挿管管理が必要な症例があり,各科との連携も重要と考えられた.

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