I-E-4
小児心臓移植後症例における冠動脈血管内皮機能の検討
大阪大学大学院医学系研究科小児科学1),大阪大学大学院医学系研究科外科学講座2)
高橋邦彦1),小垣滋豊1),那須野明香1),成田 淳1),福嶌教偉2),澤 芳樹2),大薗恵一1)

【背景】移植心冠血管病変(CAV)は心臓移植後の重要な予後規定因子の一つである.成人例において,CAV発症は高血圧・高脂血症・ドナー心の年齢などの因子が関連している可能性が報告され,その病初期には血管内皮機能に障害があることが知られているが,小児例での報告は少なく移植前後の背景も異なっていることが予想される.【目的】小児心臓移植後症例の冠動脈血管内皮機能を調べ臨床的背景との関連性を検討する.【対象】当院で心臓移植後の管理を行っている小児例 6 例(男児 2 例,女児 4 例).全例海外渡航例であった.移植前診断はDCM 4 例,RCM 2 例,TGA術後 1 例.移植時年齢は 2 歳10カ月~9 歳 6 カ月で中央値 5 歳10カ月,移植後経時年数は 1 年 2 カ月~4 年 2 カ月で中央値は 3 年 0 カ月であった.【方法】Doppler flow wireを左冠動脈内に留置し,アセチルコリン(Ach)負荷(10-5M)前後とニトログリセリン(NTG)負荷(0.004mg/kg)前後で血流速を測定し冠血流予備能(CFR)を求め,各症例の臨床的背景と比較検討を行った.【結果】NTG負荷でのCFRは2.0 ± 0.25と全例良好であった.Ach負荷でのCFRは1.0~1.27の反応不良群(4 例)と1.79~2.0の反応良好群(2 例)とに分かれた.Ach反応不良群では 4 例中 3 例でISHLT Grade 2 度以上の拒絶反応の既往を認めたが,反応良好群では 2 例ともGrade 1 度以下であった.血圧,T-cho,TG,移植時年齢,移植後経時年数,免疫抑制剤の種類・投与量との関連性は認められなかった.【考案】小児心臓移植後症例において,心内膜心筋生検の組織学的所見と冠動脈血管内皮機能とに関連性がある可能性が示唆された.今後症例数を増やして経年的変化を検討する必要があるが,拒絶反応のコントロールを含めたCAV予防対策の検討が望まれる.

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