I-F-12
川崎病急性期における血清アミロイドA動態とその臨床的意義の検討
山梨川崎病研究グループ1),山梨大学医学部小児科2)
勝又庸行1,2),杉山 央1,2),星合美奈子1,2),稲見育大1),小林浩司1),小林基章1),清水 隆1),永井敬二1),中澤眞平2)

【目的】血清アミロイドA(SAA)は,炎症により血清中に増加する蛋白として知られている.虚血性心疾患や川崎病(KD)冠動脈後遺症で高値であることが報告されており,慢性的な血管障害を示す指標としても注目されている.しかし,KD急性期におけるSAA動態についての詳しい検討はなされていない.本研究ではKD急性期のSAA動態を評価し,γグロブリン治療(IVIG)への反応性や冠動脈障害(CAL)発生との関係を明らかにすることを目的とした.【方法】KDと診断され,山梨川崎病プロトコール(初回IVIG 2g/kg投与,初回投与72時間後不応例IVIG + ウリナスタチン投与,以後不応例ステロイドパルス療法)に基づき治療された94例を対象にした.治療前と治療後 2 週間のSAAをラテックス凝集法で測定(正常値8.0μg/ml以下)し,IVIGへの反応とCAL出現との関係について検討した.paired t検定,Mann-Whitney U検定をそれぞれ用いた.【結果】94例のうちCAL陽性12例,初回IVIG不応例15例であった.SAAは全例で治療前に著明に上昇(913.1 ± 666.8μg/ml)しており,治療後に有意に低下(10.5 ± 18.6μg/ml)した.CAL陽性群では治療前値(1,183.9 ± 623.6μg/ml)がCAL陰性群(888.2 ± 704.8μg/ml)に比べ高かったが,治療後では差がなかった.またIVIG追加治療群でも,治療前値がIVIG初回反応群に比し高かった.【考察】以上からKDの治療前SAA値はIVIG不応例の予測因子として有用であり,またCAL発生の予測因子としても重要であると考えられた.SAAは炎症時の肝細胞に限らず,血管内皮や中膜平滑筋細胞で産生されることが報告されている.KD急性期のSAAは全例で非常に高値と考えられるが,今後検討を重ねて治療法等に反映させる必要性が強く示唆された.

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