I-F-55
小児開心術におけるmodified ultrafiltrationの功罪―高度で安全な心臓手術をめざして―
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
小谷恭弘,笠原真悟,川畑拓也,黒子洋介,鵜垣伸也,中倉真人,本浄修己,吉積 功,石野幸三,佐野俊二

【はじめに】modified ultrafiltration(MUF)は体外循環終了直後のヘマトクリット値の上昇,炎症性活性物質の除去,術後浮腫の軽減を目的とされるが,その有効性と方法論はいまだ議論のあるところである.当科では,全例にMUFを行うことを基本としており,今回,MUFの有効性および安全な回路の改良点につき,トラブル例も含め検討した.【対象】当科では,2000年 8 月より,MUFを導入後,現在は全例に施行している.MUFはarterio-venousで,送血管の側枝から患者動脈血および貯血槽内残血を限外濾過器へ導き,濾過後,脱血管を経由して返血する.貯血槽内の残血がなくなった場合は,リンゲル液を追加してMUFを継続する.約10分間施行後,回路内の血液がリンゲル液に置き換わった時点でMUFを終了する.2003年 1 月~2005年12月の間に当科で施行された小児開心術において,MUF施行前後の血行動態の変化,血液濃縮効果について評価するとともに,MUF施行中に発生したトラブルとその対策について検討した.【結果】期間中に人工心肺使用下に開心術を施行したのは629例であり,全例にMUFを施行した.MUFによって,ヘマトクリット値は上昇し,血圧も上昇した.心エコーによる心機能評価では,左室機能の改善を認めた.これらの効果により,術直後に安定した循環動態を得ることができた.これに対してMUF中に発生したトラブルは,過度の陰圧および陽圧,回路への気泡の混入であった.1 例で,大量の気泡混入によりMUFを中止したが,その他はMUF完遂可能であった.【結語】MUFは人工心肺終了直後に短時間で大きな効果を得ることができ,安定した術後管理が可能である.その一方で,MUFに起因するトラブルも多く,またクリティカルであることから,安全に施行できるシステムづくりが必要である.

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