I-F-64
診断およびモニタリングを目的とした術中経食道心エコーのルーチン化
東京大学医学部小児科1),東京大学医学部心臓外科2),東京大学医学部麻酔科3)
渋谷和彦1),小野 博1),中村嘉宏1),杉村洋子1),賀藤 均1),益澤明広2),土肥善郎2),高岡哲弘2),村上 新2),高本眞一2),金 信秀3)

【背景】手術室における正確な心臓の診断および循環動態のモニタリングは,手術を安全に施行するうえで不可欠である.一方,小児用経食道心エコー(TEE)のプローブの開発が進み,以前より非侵襲的に使用することが可能となっている.【実施方法】当院では重篤な食道病変などの禁忌症例を除き,原則として全手術症例にTEEを施行している.体重が 3kg以下の新生児に関しては,気管内挿管を経鼻的に行ったうえで,現時点で最も細いプローブ(Aloka社製UST52110S,先端部最大径6.0mm,シャフト径4.8mm,長さ70cm)を使用する.心停止前に術前診断の再確認を行い,心臓の修復が終了した後のpump-offの直前および直後には残存病変の有無を検討する.また,心臓の各部屋の大きさや壁の動きをモニタリングすることにより,術中の循環血液量の過不足を推定したり,カテコラミン類の増減の判断に役立てる.pump-offをする際には,必ず四腔内に残存するairをチェックするとともに,特に注意して上記のモニタリングを行う.TEEは,操作に慣れた麻酔科医あるいは小児科医が実施するが,施行中は麻酔の処置を妨げないように注意し,プローブの出し入れの際には,麻酔科医に気管内チューブの保持やバイタル変化の有無のチェックを依頼するなど,麻酔科医との連携を密にする.【結果】リアルタイムにTEEにより診断およびモニタリングが行えるため,手術室における術者および麻酔科医の的確な判断および管理が可能となる.特に再度pumpを回して残存病変を修復するか否かを判断する際の決め手となることが多い.さらに,手術終了直後のTEEによる診断が,手術室からの搬送中やPICU帰室後の管理や治療方針の根拠となる.当院におけるTEEの実施にあたり重篤な合併症はこれまでに 1 例も起きていない.【結語】安全な手術を施行するために,術中TEEをルーチン化することは非常に有用であると考える.

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