I-P-1
発作性上室性頻拍による頻拍誘発性心筋症と考えられた 3 歳男児
大阪市立総合医療センター小児循環器内科
杉本久和,村上洋介,江原英治,川崎有希

【症例】3 歳男児.【入院までの経過】入院 1 カ月前頃から咳嗽でA医院を受診していた.入院 2 日前に腹痛のためA医院を受診しX線で心拡大に気付かれたため翌日B病院を紹介受診した.翌日C病院を受診し頻拍,多呼吸,チアノーゼに気付かれて酸素投与下に当センターへ搬送された.【入院後経過】顔色蒼白で多呼吸と陥没呼吸があり脈拍触知は不良,心拍数180/分,呼吸数45/分,SpO2は95%(O2投与下),胸部X線で心拡大(CTR = 70%)および肺うっ血を認めた.心電図上心拍数188/分の頻拍で心エコー検査でLVEFは15%と非常に低下していた.PCPSを準備したうえで利尿剤,強心剤で治療を開始した.徐々に心拍数は低下し160前後となったが入院 3 日目に突然100/分の洞調律となった.この後何度か頻拍を繰り返したが徐々に洞調律優位となった.心機能の回復は遅れ入院 1 カ月後から徐々に回復し始めた.【考案】頻拍誘発性心筋症の診断は困難である.この症例でも心機能障害によって起こった頻拍との鑑別が困難であった.また発症時期が明らかでないこともあるがこの症例では約 1 カ月と考えている.洞調律を保つことで心機能の回復が期待できるがその期間は数週間から 1 年とさまざまであり今回も心機能が回復し始めたのは約 1 カ月後であった.また頻拍の再発による心機能の低下および死亡も報告されており現在抗不整脈剤により洞調律維持を図っているがablationが必要となる可能性もある.【まとめ】発作性上室性頻拍による頻拍誘発性心筋症と考えられた症例を報告した.早期診断および頻拍停止が必要であるがこれは困難であった.また洞調律復帰後も心機能回復には時間を要する.

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