I-P-2
発作性上室性頻拍後に脳梗塞を認めた 2 小児例
天理よろづ相談所病院小児循環器科
松村正彦,吉村真一郎,田村時緒

【はじめに】発作性上室性頻拍(PSVT)や心房細動後に脳梗塞を来すことは,成人ではよく知られているが,小児ではまれである.今回われわれは,上室性頻拍発作後に脳梗塞を認めた 2 例を経験したので報告する.【症例 1】2 歳女児(現在27歳).体重13.5kg.発育発達は正常であった.1 週間,食欲低下と嘔吐,下痢が断続し,近医にて頻拍と 3 音gallop,肝腫大,四肢の浮腫・冷感を指摘されて他院に入院した.240/分のPSVTと診断され,アミサリン計300mgで発作消失した.洞調律復帰後の心電図にてΔ波を認めWPW症候群と診断された.2 日後に,顔面神経麻痺と右上下肢不全麻痺に気づかれ,CTにて左脳梗塞と診断されて当院へ転院した.その後は頻拍発作なく,歩行可能となり10日目に退院した.その後は年に 1,2 回の短い発作を自覚する程度であった.今回妊娠・出産を考えてアブレーションを施行された.【症例 2】4 歳女児.体重15kg.発育発達は正常であった.6 日間,全身倦怠感と不機嫌,食欲低下,時に嘔吐を認めた.近医で頻拍と四肢の浮腫に気づかれ他院に入院した.250/分のPSVTを認めATPで改善後,心エコーで左房内腫瘤に気づかれ当院転院となった.その搬送時に痙攣が出現した.転院後の心エコーでは左房内に異常なし.頭部MRIにて左中大脳動脈灌流領域に梗塞を認め,SPECTにて同部位の血流低下を認めた.当初は顔面神経麻痺を伴う右半身麻痺で,発語も不明瞭であったが,顔面神経麻痺は消退し,発語も回復し 3 日目には歩行可能となった.その後,ワソラン内服にて経過観察するも数回,頻拍発作が出現しており,アブレーションを考慮中である.【まとめ】発作性上室性頻拍発症後24時間以内では,心不全を生じることはないが,48時間以上では50%に心不全を発症すると言われている.今回の 2 症例は,いずれも上室性頻拍発作が数日間持続したのち,心不全に陥った結果生じた血栓により脳梗塞が引き起こされたと考えられた.

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