I-P-3
フレカイニド持続静注が奏功した新生児発作性上室頻拍の 1 例
大阪医科大学小児科1),阪和住吉総合病院小児科2)
尾崎智康1),片山博視1),玉井 浩1),清水俊男2)

【はじめに】胎児期および新生児期における不整脈として,発作性上室性頻拍はまれな疾患である.今回われわれは基礎心疾患を伴わず,出生直前に発作性上室性頻拍を認め,出生後も断続的に頻拍発作を繰り返し,フレカイニド持続静注療法が有効であった 1 例を経験したので報告する.【症例】妊婦検診時に胎児頻脈(> 200bpm)を認めたため,緊急帝王切開にて出生した女児.3,498g,Apgar score 10/10で全身状態は良好なものの頻脈が改善しないため 2 日後に当科入院となった.入院時,210~220/分の上室頻拍を認めた.心臓超音波検査では頻脈に伴う心機能の低下(FS 22.2%,EF 47.2%)と軽度の僧帽弁閉鎖不全を認めたが,心奇形や心筋症を疑うような所見は認めなかった.HANP 180pg/ml,BNP 251pg/mlと上昇を認めた.ATP急速静注は無効で,DC・ジギタリス急速飽和を行い一時的に発作は停止した.しかし再度頻拍発作が出現したためフレカイニド投与を行った.フレカイニド静注後は洞調律に回復するが頻拍発作を断続的に認めるため,フレカイニド持続静注療法(0.4mg/kg/hr)に変更した(開始後 2 日後血中濃度383ng/ml).治療後より洞調律に回復し,数日ごとに静注量を漸減していき,フレカイニド内服も併用しつつ経過観察を行った.フレカイニド持続静注量0.125mg/kg/hr,内服30mg/dayの時点で発作が 1 日数回散見されるようになったが,内服を50mg/dayに増量後発作は消失した.以後,有意な発作を認めず持続静注を中止し内服のみで経過観察でき著変なく軽快退院となった(退院前フレカイニド血中濃度611ng/ml).なお退院前FS 32%,EF 68.8%,HANP,BNPは基準値未満に改善していた.【まとめ】胎児期および新生児期にまたがる発作性上室性頻拍の 1 例を経験した.フレカイニド投与により頻拍および心機能の改善をみた.文献的考察を加えて報告する.

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