I-P-4
胎児期から観察された新生児心室頻拍の 3 症例
徳島大学医学部発生発達医学講座小児医学分野
阪田美穂,森 一博,早淵康信,鈴木光二郎,香美祥二

【背景】基礎疾患を認めない新生児心室頻拍(VT)はまれである.われわれは胎児不整脈で発見された新生児心室頻拍を 3 例経験した.【症例 1】妊娠34週 3 日に胎児頻脈(200bpm)に気づかれた.胎児エコーにて 1:1 の室房伝導を伴っていた.胎児水腫を認めたため緊急帝王切開で出生した.ATP投与により房室解離が判明した.右脚ブロック左軸偏位型(左脚後枝起源)で,リドカインは無効で,フレカイニドの静注にて洞調律となった.【症例 2】妊娠38週 1 日に胎児頻脈(182bpm),胎児心不全を認めたため緊急帝王切開で出生した.本例も 1:1 の室房伝導を認めたがATP投与により房室解離が判明した.左室前枝起源と考えられる特殊型で,DCで洞調律に復しプロプラノロールの内服を行った.【症例 3】妊娠40週 2 日に胎児不整脈に気づかれた.胎児エコーによる下大静脈血流波形から心室性期外収縮の連発を確認し,緊急帝王切開を施行した.本例のVTは非持続性の左脚ブロック右軸偏位型(右室流出路起源で190bpm)で,ジソピラミドは無効で,プロプラノロールの内服にて洞調律化した.【考察】2 例で胎児心不全を認めたが,全例洞調律後の経過は良好で再発は認めていない.3 例中 2 例は 1:1 の室房伝導を認め,胎児エコーではVTと上室性頻拍との鑑別が困難であったが,出生後ATP投与により房室解離を認めたことから診断できた.室房伝導を伴う心室頻拍はまれであるが,診断には出生後ATP静注が有用である.また 3 例のVT起源は異なっており,新生児VTの「多様性」が示唆される.

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