I-P-5
PSVTに対しcarvedilolが有効であった,無脾症症例
榊原記念病院小児科1),榊原記念病院心臓血管外科2)
嘉川忠博1),佐藤裕幸1),藁谷 理1),西山光則1),朴 仁三1),畠井芳穂1),森 克彦1),村上保夫1),高橋幸宏2),安藤 誠2)

【はじめに】Fontan適応の心不全症例に対するcarvedilolの有効性の報告がなされているが,同時にPSVTのコントロールに対し有効であった無脾症症例を経験したので,報告する.【症例】肺動脈低形成のため,2 度にわたりFontan(TCPC)take downとなった右室性単心室,肺動脈閉鎖,無脾症の女児.下大静脈-心房間に狭窄を生じPLEとなり,3 歳 4 カ月時に人工血管による再建術を受けた.術後もPLE遷延し,アルブミン投与,ヘパリン療法を試みたが効果が持続せず,prednisolone内服が必要となった.PSVTが頻発し,disopyramide,flecainideにてコントロールつかず,procainamideにて落ち着き,術後45日でようやく退院可能となった.しかし,その後もPSVT頻発し入退院を繰り返した.発作には啼泣や興奮がきっかけとなり,抑止にはmidazolamでの鎮静を要し,MIBGでwashout rate 56.8%と亢進し,H/M比1.9(early),1.23(delay)と低下がみられ,交感神経活性の亢進状態が示唆された.hANP 126pg/ml,BNP 55.9pg/mlの上昇も認められ,3 歳10カ月時にcarvedilolを0.05mg/kg/dayより開始したところ,以後PSVTはみられなくなった.prednisoloneも漸減中止され,以後PLEの再発はみられていない.脈は70/分台の接合部調律が基本だが,正常洞調律も認められるようになった.carvedilol 0.45mg/kg/dayまで増量し,4 歳 2 カ月時にprocainamideを中止したところ,1 カ月後にPSVT再発し,carvedilol,procaiamideの併用を続けている.脈の安定化とともに日常生活のQOL改善し,心不全徴候なく,外来にて様子観察できるようになった.【まとめ】本症例は慢性的な交感神経活性状態にあり,抗不整脈薬にてPSVTのコントロール不良であったが,carvedilolを併用することで抑止できるようになった.

閉じる