I-P-6
心肺停止蘇生後に植込み型除細動器を植え込んだ先天性QT延長症候群の 1 例
福井大学医学部小児科1),福井県立大学看護福祉学部2)
田村知史1),斎藤正一2)

【背景】小児のQT延長症候群(LQTS)に対する植込み型除細動器(ICD)植込みの報告は本邦ではいまだに少数である.われわれはβブロッカー内服下にtorsade de pointes(TdP)発作による心肺停止を来し,蘇生後にICD植込みを行った先天性LQTSの 1 例を経験した.【症例】13歳,男児.5 歳時を初発に 4 回の失神歴があり,LQTSの診断下に 6 歳時よりβブロッカー内服中で,11歳時の遺伝子検査にてLQT1 と診断していた.【家族歴】患児は 4 人兄弟の次男.三男,四男,母はいずれもLQT1 で失神歴を有する.【現病歴】入院当日朝,学校の体育館で友人と追いかけっこをしていた際に失神,昏倒した.救急隊到着(QQ)時,心肺停止で心肺蘇生を開始,救急車の心電図モニター上TdPを認め,除細動(200J)によりQQ 7 分後に洞調律に復帰,QQ20分後に当院へ搬送入院した.【入院時現症】意識レベル:3~300,心拍数91bpm,洞調律,血圧100/55mmHg.血清電解質に異常はないが,動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスがあった.【経過】ICUへ収容し,人工換気,浸透圧利尿剤等を開始,βブロッカーは経鼻投与した.TdPの再発なく,意識レベルは改善し,入院 3 日目に人工換気から離脱できた.入院後30日目にICD植込みを行った.静脈温存を優先し,single chamber ICDを選択.全身麻酔下に静脈切開法にてリードを挿入し,成長を考慮して右房内でループさせた.ICD本体は大胸筋下に置いた.経過は良好で,術後15日目に退院したが,退院時に低酸素性脳症によると思われる認知,記憶障害が遺残した.ICD植込み後 4 カ月の経過で,ICDの作動,誤作動は認めない.【結語】適応があれば小児においてもICD植込みは考慮すべき治療である.ただ,その適応については患児の年齢,転帰や予後,一次予防的植込みを含め,さらに検討する必要があると考えられた.

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