I-P-7
長期経腸栄養中セレン補充により,左心収縮能が改善・正常化したBrugada症候群の 1 例
東邦大学医療センター大橋病院小児科
山口佳世,小田優子,富士川善直,川下尋子,山口之利,二瓶浩一,四宮範明

生来健康な男児.13歳の時,サッカー中に心肺停止となり近医へ搬送された.蘇生開始後40分で心拍が開始したが,虚血性脳症の後遺症を残した.蘇生時の特徴的な心電図所見によりBrugada症候群と診断された.その 8 カ月後より,発作性上室性頻拍が頻回となり,コントロール困難であったが,酢酸フレカイニド内服開始にて不整脈は漸減・消失した.翌年の心エコーにてLV-EF 28%,中等度のMRが認められた.同年に当院へ転院した.当院入院時心エコーでも左心収縮能の著明な低下,左室内腔の拡大(LVDd 68.5mm)を認めた.また入院時の血液検査で,血清セレン値は0.2μg/dl(正常値:9.7~16)と極端な低値を示した.当時新発売されたセレン製剤投与(セレンとして2.3μg/kg/d.)にて,徐々にセレン値は上昇し,加療後約 1 年でほぼ正常化(8.6μg/dl)するとともに,心エコー上,核医学検査上でもLV-EFは改善し正常化した.セレン値上昇とともに,左室収縮能が改善した 1 例を経験した.文献的考察を加えて報告する.従来の経腸栄養剤にはセレンが含まれておらず,長期にわたる経腸栄養が必要な場合,微量元素製剤の併用が必須であると思われた.

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