I-P-8
Brugada型心電図に対するpilsicainide負荷試験 6 例の検討
聖マリアンナ医科大学小児科1),聖マリアンナ医科大学循環器内科2)
麻生健太郎1),水野将徳1),都築慶光1),有馬正貴1),後藤建次郎1),栗原八千代1),村野浩太郎1),中沢 潔2)

【はじめに】Brugada型心電図が発見された場合のリスク判定方法の一つとしてナトリウム遮断薬負荷による心電図変化確認が挙げられる.今回われわれは 6 例のBrugada型心電図に対しpilsicainide負荷試験を行った.リスク判定に用いられる家族歴,失神の既往,高位右側誘導心電図,心室遅延電位などと比較してその有用性を検討した.【対象と方法】Brugada型心電図 6 例(男 4 名,女 2 名)の発見の契機は学校心臓検診での発見が 4 名,胸痛の精査が 1 名,川崎病罹患が 1 名であった.6 例の負荷前の心電図波形はESCの分類のtype 1 が 3 名,type 2 が 2 名,type 3 が 1 名であった.pilsicainide負荷は 1mg/kgを10分かけて静注し負荷前後で標準12誘導心電図と高位右側胸部誘導心電図を記録した.V1 もしくはV2 でJ波の振幅の絶対値が 2mm以上の増加を示す場合あるいはtype 2,3 からtype 1 に変化したものを陽性とした.【結果】pilsicainide負荷試験で陽性所見を示したものは 3 名であった.陽性所見が得られた 3 名はいずれも負荷前にtype 1 が認められていた.陽性所見を示した 3 例中に家族内で45歳以下の突然死があったものはなく,失神の既往のあったものもいなかった.体表面加算心電図で心室遅延電位が陽性だったものは負荷試験で陽性を示した 2 名であった.陽性例の高位右側胸部誘導心電図はすべて 2 誘導以上でJ波がより顕著となっており,高位右側胸部誘導心電図のJ波の顕在化およびJ波の確認可能な誘導の増加はpilsicainide負荷試験陽性を予想させる可能性があると思われた.【考案】症例が少なくpilsicainide負荷試験の有用性についての言及はできないもののpilsicainide負荷の陽性所見とほかのリスク判定とで一致をみる例は少なくBrugada症候群の診断に至った例はなかった.Brugada症候群の抽出の困難さを改めて痛感させられた.

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