I-P-12
埼玉県立小児医療センター総合診療科を受診した来院時心肺停止症例の検討
埼玉県立小児医療センター総合診療科
関島俊雄

【はじめに】埼玉県立小児医療センター総合診療科(当科)で経験した到着時心肺停止(CPAOA)の現状を振り返り,課題を検討した.【対象と方法】当科で2002年 4 月~2006年 1 月に経験したCPAOAの診療録を後方視的に考察した.CPAOA蘇生後で当院に搬送された症例,救急隊員が接触時に心肺停止(CPA)であったものも数に含めたが,当院循環器科で経過観察中にCPAOAとなったものは対象から除外した.【結果】症例数は35人,のべ36症例.男女比は22対14.年齢は生後 2 週~14歳,平均3.5歳.CPAOA受診までに基礎疾患を指摘されていたのが19例であったが,循環器疾患を指摘されていたものはなかった.CPAOAの受診で受診後24時間以内に死亡したのが24例,24時間以上心拍が回復したが死亡退院した症例は 5 例で,生存退院した 3 例はすべて重度後遺症を残した.現在治療継続中の 4 症例では,1 例のみ後遺症ない生存(IS)が得られたが,他の 3 症例は重度後遺症を残した.救急隊員によるby stander CPR(CPR)が施行され速やかに心拍が再開した 1 例だけが,ISが期待できた.自動除細動器が使用された症例,地域メディカルコントロール協議会(MC協議会)で,事後検証が行われた症例はなかった.【考察】小児のCPAでは呼吸原性心停止が多いとされているが,当科の症例では循環器基礎疾患を除外したこともあるが,呼吸原性心停止と推測される例が多かった.受診後に心拍が再開された例でもISの症例はなく,心肺停止時間をいかに短くするかが課題と考えられた.自宅でCPAに至った例が多く,家族への蘇生教育が重要であると考えられた.【まとめ】当科でのCPAOAの生存率は決して満足できるものではなかった.心肺脳蘇生を必要かつ十分に行うためには,PICUの設置,病院内での心肺蘇生の知識・技能の向上だけでは不十分で,既存のMC協議会などとも図りながら,地域・家庭における心肺蘇生の普及,技能の向上の必要がある.

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