I-P-17
ペースメーカ植込み術が著効した合併心奇形を伴わない高齢者の修正大血管転位症の 1 例
国家公務員共済組合連合会大手前病院心臓血管外科1),国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器内科2),大阪大学大学院臓器制御外科3)
近藤晴彦1),市川 肇3),栗田晃宏1),山田貴之2),山本和美2),伊藤賀敏2),市堀泰裕2),新谷英夫1)

合併心奇形を伴わない修正大血管転位症(cTGA)は,成人期まで無症状で経過し得るものの,房室伝導障害,体心室不全,体心室の房室弁閉鎖不全(MR)が遠隔期に問題となる.しかし,このMRに対する弁置換術の成績・予後は必ずしも満足できるものではなく,特に60歳を超える高齢者においては,疾患の自然歴自体もいまだ不明なことから治療法の選択には慎重を要する.今回合併心奇形を伴わない64歳のcTGAの完全房室ブロック(CAVB)による徐脈およびMRに対して,ペースメーカ植込み術を行い,良好な結果を得たので報告する.【症例】症例は64歳女性.就職後,毎年,検診時に心電図と胸部Xp異常を指摘されていたが放置.64歳時の検診で徐脈(心拍数36回/分)を指摘され,紹介入院.入院時のNYHAは 2 度,心胸郭比54%で右胸心,心電図はCAVBで心拍数は39回/分.エコー上 3 度のMRを認め,BNPは354pg/mlと高値.心臓カテーテル検査で合併心奇形を伴わないcTGA{S,L,L}と診断された.【治療および経過】ペースメーカ植込み術 + 房室弁置換術を検討したが,高齢者でかつ弁置換後の予後,疾患の自然歴が不明なことからペースメーカ植込み術のみを行う方針とし,房室収縮の連関も改善させるべくDDDR型(心内膜下電極,screw in type)を選択.電極は左側鎖骨下静脈から挿入し,右心耳および機能的右心室心尖に留置し,A-V delayは170msecに設定した.ペースメーカ植込み術と同時に施行した右心カテーテル検査・エコー検査では,心拍出量,SvO2はそれぞれ植込み前で4.1l/min,74.1%,植込み後で4.5l/min,74.7%と変化は認めなかったが,心拍数は44~68回/分(A sense V pace)に増加し,エコー上,MRは 3~2 度へ軽減.術後経過は良好で,術後 5 カ月の検査上,NYHAは 1 度,心胸郭比は45%,エコー上のMRも 1 度,BNPも63pg/mlと改善した.【まとめ】合併心奇形を伴わない高齢者cTGAのCAVBによる徐脈およびMRに対し,ペースメーカ植込み術を行い良好な結果を得た.

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