I-P-19
川崎病冠動脈瘤内血栓・内膜肥厚の画像がモダリティにより相違した 1 例―UCG,CAG,MRCA,MDCTによる検討―
順天堂大学医学部小児科1),順天堂大学医学部放射線科2),東京逓信病院小児科3)
福永英生1),秋元かつみ1),稀代雅彦1),大久保又一1),山城雄一郎1),木暮陽介2),鈴木淳子3)

【背景】川崎病患児の画像診断で,モダリティによる画像の相違,特に瘤内血栓の評価についての画像評価について検討した報告は少ない.左冠動脈に巨大瘤内血栓を有する乳児で,心臓超音波検査(UCG)と冠動脈造影(CAG)との血管径に差異を生じ,MRCAやMDCTが瘤内血栓や壁肥厚の診断に有用であったので報告する.【症例】生後 5 カ月で川崎病発症の男児.急性期に 3 回のγグロブリン超大量療法(2g/kg/day)および 3 回のステロイドパルス療法(30mg/kg/day)を施行したが,第 9 病日より左右冠動脈拡張を合併し,左冠動脈(seg. 6~7)は第30病日にUCG上最大径 8mmの紡錘状の巨大瘤となった.第50病日においてもUCG上瘤の内径は 8mmで内腔に血栓は認めなかった.同日施行したCAGでは瘤の内径は4.9mmで差異を認めたが血栓を積極的に疑う不整や突出は認めなかった.発症 3 カ月後に他院にて施行したMRCAでは,seg. 6~7 の血管径は 8mmであったが,同部位に偏心性の陳旧性の瘤内血栓を認め内腔の狭窄を示唆する所見を認めた.発症 6 カ月後のMDCTでは明瞭な画像は得られなかったが,MRCAと形態の異なる血栓が認められた.【考察】UCGとCAGの血管径の差はMRCA,MDCTによれば血栓によるものであった可能性が高い.通常UCGでも壁の肥厚や血栓は描出されることが多いが患児の場合,血栓の部位や性状により描出が困難だった可能性がある.MRCAやMDCTでは狭窄性病変の描出が可能であり,有効血管内径も計測し得た.【結語】乳児を含めた川崎病患児の冠動脈壁の血栓や肥厚の評価にはMRCAやMDCTが有用である.しかしながらいずれの検査も乳児では画像の精度が不十分で血栓を過大評価する傾向があるため多種の検査を総合的に判断する必要がある.

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