I-P-20
小児における冠動脈バイパス術の経験
九州厚生年金病院心臓血管外科1),九州厚生年金病院小児循環器科2)
井本 浩1),瀬瀬 顯1),坂本真人1),落合由恵1),梶原敬義1),神尾明君1),城尾邦隆2),弓削哲二2),渡辺まみ江2),宗内 淳2),山村健一郎2)

【目的】小児冠動脈バイパス手術につき問題点を検討したので報告する.【症例】症例 1:7歳男児,22.4kg,川崎病.RCAは複数の瘤を形成しseg 2 で完全閉塞.LCAはseg 5~6 付近に径30mmの瘤があり,seg 6 の瘤(6mm,LCXが分岐)との間の冠動脈に 3 年間で2.4~0.9mmへと狭窄の進行を認めた.左室壁運動の異常はなく,心筋シンチでも灌流欠損なし.症例 2:10歳男児,41.5kg.先天性のLCA入口部狭窄.大動脈弁狭窄(2 尖弁,圧較差25mmHg)の経過観察中に運動負荷シンチにてLAD領域の灌流欠損を指摘.RCAは拡張し,LADへの側副血行を認めた.症例 3:12歳男児,30.2kg.生後 2 カ月でTGA-II型(冠動脈Shaher-1 型)に対しJatene手術施行.1 年後の心カテにてLMT閉塞,RCA→LCAの側副血行を確認.今回術前検査で左室壁運動異常なく,運動負荷で軽度のST低下あったがシンチで灌流欠損を認めず.【手術】3 例とも中等度低体温体外循環,心停止下に冠動脈バイパス術(左内胸動脈-LAD吻合)を施行.LAD吻合口はいずれも1.5mmプローブが通過可能.heelに 3~5 針の単結紮(8-0)を置き,残った部分を連続縫合した.症例 2 では大動脈弁交連切開を併用.【結果】死亡はなく,冠動脈バイパスは全例開存.症例 1 でLCA-seg 6 の瘤内に血栓形成とLCX閉塞を認め,バイパスの競合による血流低下のためと思われた.症例 3 で内胸動脈の途中に軽度の狭窄を認めグラフト採取時の損傷と思われた.【まとめ】7~12歳(22.4~41.5kg)の小児に冠動脈バイパス術を行い吻合に関しては問題なかった.小児では川崎病の動脈瘤など小児特有の問題もある一方で,心表面の脂肪が少なく冠動脈の走行が確認しやすいこと,血管壁の動脈硬化なく均質で吻合が容易,など成人に比べ必ずしも難度が高いばかりではないと思われた.

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