I-P-21
血清ナトリウム低値を認めた川崎病症例について
東邦大学医学部第二小児科
二瓶浩一,道海秀則,山口佳世,四宮範明

【目的】川崎病急性期に血清ナトリウム(Na)値の低下した症例について病態や予後を検討する.【対象と方法】対象は川崎病診断の手引きにて川崎病と診断した100名.血清Na値が入院後解熱するまで,あるいは第 9 病日に至るまでに135mEq/l未満を呈した例(以下低Na例)と135mEq/l以上の例(正Na例)について,各種検査項目や予後について後方視的に検討した.【成績】低Na例は70例(70%)であった.さらに血清Na値が130mEq/l未満の中等度以上の低Na血症の症例は14例(14%)であった.低Na例は原田スコアの各種項目および原田スコアにおいて有意に悪化しており,追加治療を必要とする頻度は有意に高かった.冠動脈後遺症は100例中 2 例であったが,どちらも血清Na値は130mEq/l未満例であった.尿中Na排泄は低Na例で有意に低下していた.なお尿比重は両群間で有意差はなかった.血清VEGF(vascular endothelial growth factor)値も両群間に有意差はなかった.【結論】川崎病急性期経過中に低Na血症を来す症例は追加治療を必要としたり(いわゆる不応例),冠動脈後遺症の危険因子となり得ると思われた.尿所見等の検討からはNaの第三相への移行が低Na血症の主たる要因と推測されたが,強い血管透過性亢進作用を有するVEGFの関与は明らかではなかった.

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