I-P-23
ガンマグロブリン大量療法時代の川崎病急性期の心筋障害と心膜炎
久留米大学医学部小児科1),久留米大学循環器病センター2)
岸本慎太郎1),須田憲治1),籠手田雄介1),伊藤晋一1),工藤嘉公1),石井治佳1),家村素史2),加藤裕久1),松石豊次郎1)

【目的】ガンマグロブリン大量療法の導入により,川崎病の多くの重症合併症が減少した.本研究の目的は,川崎病急性期の心筋障害と心膜炎について検討することである.【対象と方法】当院の1990年以降の川崎病データベースから,川崎病としてガンマグロブリン療法を受けた患者のうち,急性期の心エコーで左室駆出率(LVEF) = 60%未満あるいは2.0mm以上の心嚢水の症例について,臨床像,予後について検討した.【結果】同時期の川崎病患者2,300人の患者のうち,16例(0.8%)を対象とした.6 例はLVEF:40~57%で,しかも2.0~12.9mmの心嚢水を合併し,10例はLVEFは60%以上であったが,2.0~12.0mmの心嚢水を認めた.男児 8 例,女児 8 例,年齢中央値は3.0(0.3~13.0)歳.全例 5/6 以上の川崎病の症状を呈した.2 度以上の僧帽弁閉鎖不全を 6 例,肝障害を 0 例,胸水を 3 例で認めた.全例,中央値4.5(3~13)病日に,中央値2.0(1.0~6.0)g/kgのガンマグロブリンとアスピリンの投与を受けた.16例中 5 例(31%)は,ガンマグロブリン単回投与で改善し,1 例はガンマグロブリン 2 回投与で改善したが,残りの10例(63%)は,ガンマグロブリン投与に加えて,ステロイドの経口あるいはパルス療法を必要とした.心ポンプ機能の低下のためカテコラミン類を必要とした例は 2 例で,利尿剤を必要とした例は 5 例であったが,死亡例や心タンポナーデを来した例はなかった.6 例は一過性の冠動脈拡張を来したが,心筋障害を来さなかった 2 例で巨大冠動脈瘤を残した.【結語】一部の症例で冠動脈瘤を残すこともあるが,ガンマグロブリン大量療法とステロイドを含む補助治療により,川崎病に伴う心筋障害や心膜炎の予後はおおむね良好である.

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