I-P-25
重症川崎病に対するシクロスポリン療法の治療経験
松山赤十字病院小児科
馬場健児

【はじめに】ガンマグロブリン超大量療法不応例に対するガンマグロブリン追加投与は広く行われているが,追加投与不応例に対しての治療方針に関して一定の見解は得られていない.われわれはステロイドパルス(以下SP)療法不応例や,冠動脈拡張のためSP療法を断念した症例に関してシクロスポリン療法を行い,良好な結果が得られたので報告する.【対象】2005年 1 月~12月の 1 年間にシクロスポリン療法を行った川崎病 4 例.内訳はSP不応例 2 例とSP断念例 2 例.なお当院では2005年より原則としてSP療法は投与前に冠動脈拡張を来した例や開始日が第10病日以降となる症例に関しては行っておらず,m-PSL 30mg/kg/day × 3daysで投与終了とし,その後のステロイド内服は行っていない.【結果】シクロスポリン投与開始日はSP不応例では第11病日と第13病日,SP断念例では 2 例とも第 9 病日.全例シクロスポリン1.3mg/kg/day持続投与で開始し,血中濃度,症状などより投与量を増減した.全例ウリナスタチン,アスピリンを併用し,ST合剤の予防内服も行った.いずれも投与開始後 2~4 日で解熱傾向を認めたが,SP不応例の 2 例では微熱が遷延し,うち 1 例にガンマグロブリンの追加投与を行った.有熱期間はSP不応例が20日間と21日間,SP断念例がいずれも13日間であった.症状および血中濃度が安定した後シクロスポリンを内服に変更した.静注期間は 8~14日間であった.内服は発症後 2 カ月を目安に漸減,中止可能であった.経過中いずれも一過性の冠動脈拡張を認めたが,その後退縮し,冠動脈瘤が残存した例はなかった.シクロスポリン投与中の有害事象は 1 例で無症候性の高血圧を認めたのみであった.【まとめ】シクロスポリン療法は重症川崎病に対する有効な治療法の一つであると考えられた.

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