I-P-26
シクロスポリンが有効であった難治性川崎病の 2 例
和歌山県立医科大学小児科1),紀南病院小児科2)
鈴木啓之1),武内 崇1),渋田昌一1),末永智浩1),南 孝臣2),吉川徳茂1)

川崎病(以下KD)の治療においてγグロブリン大量療法(以下IVIG)に不応である場合,冠動脈病変(以下CAL)を生じる可能性が高いが,このような症例に対する確実な治療法はない.今回,IVIG不応例に対してシクロスポリンを使用し,有効と考えられたので報告する.【症例 1】6 歳 1 カ月,女児.第 2 病日に発熱,腹痛を主訴に来院し,口唇紅潮,左頸部リンパ節腫脹を認めKD疑いで入院.第 3 病日に発疹,四肢末端の発赤が出現したため,第 4・5 病日にIVIG(1g/kg/日)を連日静注したが解熱せず,第 7 病日に 1g/kg/日を追加静注も効果なく,CRPは上昇したため,第 8 病日から 3 日間ステロイドパルス(30mg/kg)を行った.一時的に解熱したが,再び発熱し,CAL(LAD 8mm,RCA 6mm)も進行した.強い股関節痛も合併したため第26病日からシクロスポリン3mg/kg/日で開始したところ,発熱・関節痛は速やかに消失した.【症例 2】3 歳 4 カ月,男児.発熱,右頸部リンパ節腫大,腹痛を主訴に第 2 病日紹介入院.第 3~4 病日に発疹,手掌紅班も出現したため,第 4 病日にIVIG(2g/kg/日)を静注したが解熱せず,第 6 病日のIVIG(1g/kg/日)追加にも不応であったため,ステロイドパルスを第 7~9 病日に行った.しかし,第12病日から再度発熱を生じ,第17病日から冠動脈拡張を生じ,進行性であったため(C1:4~5mm,C6:4~5mm),第20病日からシクロスポリン 3mg/kg/日で開始したところ,速やかに解熱しCRPも低下した.【考案】IVIG不応の 2 症例にシクロスポリンを使用し,炎症反応は比較的速やか消失した.2 例とも第15病日以降で,すでにCAL発症後の使用であったためCAL発症予防効果については不明であるが,今後,不応例への早期使用を検討する価値のある治療法と考えられた.

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