I-P-27
左下肺静脈狭窄の自然軽快
近畿大学医学部小児科
三宅俊治,篠原 徹,橋本 恵,井上智弘,竹村 司

【はじめに】正常に左房に結合する肺静脈の狭窄はまれであり,先天性心疾患の合併例が多い.われわれは,川崎病罹患後の心臓カテーテル検査(心カテ)時に発見された左下肺静脈狭窄が自然に軽快した例を経験した.【症例】症例は,5 歳女児.二卵性双生児の姉は健常である.新生児高ビリルビン血症のため交換輸血の既往がある.1 歳 0 カ月時に,主要症状 4 つおよび断層心エコー所見(冠動脈拡大)で,川崎病と診断した.22病日に,左冠動脈(5)4.7mm,右冠動脈(1)3.6mmとなった.経過中,心膜液貯留・肺合併症はなかった.発症後 6 カ月で,心カテを施行した.大腿動脈にシースを挿入できず,主肺動脈造影で冠動脈の評価を行った.冠動脈には明らかな瘤を認めなかったが,左下肺静脈への造影剤の通過時間の遅延を認めた.選択的左肺動脈造影では,左上肺静脈から約2.5秒遅れで左下肺静脈が造影された.肺血流シンチでは,左下肺野の血流低下は軽度であった.5 歳時に,再度心カテを施行した.左右冠動脈造影では,瘤はregressionしていた.主肺動脈造影での造影剤の通過時間は,左肺静脈の上下差を認めなかった.【考察】肺静脈狭窄の多くは先天性心疾患に合併し,先天性である.一方,縦隔炎での肺静脈閉塞の報告例,また肺生検で炎症性の変化を有する例がある.本例の川崎病急性期には,心膜液貯留および肺病変は認めず,その関与は不明である.重症の狭窄例では,進行例が多く,外科手術の報告が多い.一方,軽症の狭窄例では,予後は良好と考えられるが,本例と同様の自然軽快例の報告はない.軽症の本例では,肺動脈造影における上下の肺静脈描出の非同期が診断の手がかりとなった.軽症の肺静脈狭窄は,幼児期に軽快する可能性があると考える.

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