I-P-30
小児期Marfan症候群の心血管系異常
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科学分野
鈴木 浩,仁木敬夫,笹 真一

【背景】Marfan症候群は骨格・眼・心血管系の異常を主体とするが,小児期の心血管系に対する管理について一定の基準がない.【目的】小児期のMarfan症候群の心血管異常を臨床的に検討すること.【対象・方法】当科で小児期にMarfan症候群と診断した 9 例(男 3 例,女 6 例)を対象とした.Marfan症候群の診断はDe Paepeの診断基準により行った.心エコー所見の経過や治療について検討した.【結果】初診時年齢は 3~14歳で,家族歴は 4 例にあった.初診時に 6 例ではValsalva洞が明らかに拡大していた.6~19歳時,初診後 4 カ月~14年後に 7 例に対して薬剤投与が開始された.6 例にValsalva洞拡大に対しβ遮断薬が,僧帽弁逆流に対し 1 例にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与された.手術を施行した 2 例を除いて経過は良好であった.手術例を提示する.1 例は 3 歳時にMarfan症候群と診断され,6 歳からβ遮断薬を投与したが,7 歳時にValsalva洞の最大径が56mmとなり,中等度の大動脈弁逆流があり,Bentall手術を施行した.他の 1 例は 7 歳時にMarfan症候群と診断された例で,8 歳から難治性湿疹に対して時々ステロイドを経口投与されていた.14歳時からβ遮断薬を投与した.15歳時,Valsalva洞の最大径は47mmで軽度の大動脈弁逆流があった.IIIb型大動脈解離を発症し,大動脈基部上行弓部下行大動脈置換術を施行した.【結語】小児期Marfan症候群のなかにはValsalva洞の著明な拡大や大動脈解離によって手術を必要とする例がある.小児期Marfan症候群の心血管系の異常に対し,積極的な管理が重要である.

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