I-P-32
純型肺動脈閉鎖に重度大動脈弁下狭窄を伴った 1 胎児例
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学産婦人科2)
竹田津未生1),熊倉理恵1),岩本洋一1),石戸博隆1),松永 保1),先崎秀明1),小林俊樹1),西林 学2),小林浩一2)

純型肺動脈閉鎖には三尖弁病変をはじめとした合併心血管病変が知られているが,大動脈狭窄の合併はまれである.純型肺動脈閉鎖に重度大動脈弁下狭窄を伴い,救命し得なかった胎児例を経験した.【症例】在胎33週 5 日,胎児心奇形を疑われ紹介,純型肺動脈閉鎖,大動脈弁下狭窄と診断された.大動脈弁下ドプラ流速1.5m/s,左室収縮低下,左室拡大,心嚢水がみられ,すでに胎児心不全に至っていたが,低出生体重での救命は困難と判断,妊娠継続となった.1 週間後には大動脈弁下狭窄は進行していた(V = 2.5m/s)が,軽度僧帽弁逆流を生じており,心室収縮は改善,心嚢水は消失していた.翌日の胎児心エコーでは大動脈弁下狭窄はさらに進行し(V = 3.0m/s),僧帽弁逆流は 3 度に進行,左房の拡大がみられた.その後,大動脈弁下狭窄と僧帽弁逆流は経時的に進行し,左房拡大が顕著となったため,36週 1 日帝王切開にて出生した.出生時は呼吸補助なく蘇生良好.心エコー上の診断は胎児期同様.出生時には左室収縮は比較的保たれていたが,僧帽弁逆流が多く,大動脈内の血流が乏しかった.出生後短期間に左室収縮が低下し,20分後挿管,その後も心不全は急速に進行し,出生後 2 時間で死亡に至った.【結語】片側流出路閉鎖存在下での重度流出路狭窄では,特に重度の房室弁逆流を合併すると,出生後胎盤を失った後のoutput確保は非常に困難である.胎児期治療の発達により救命が可能になることが望まれる.

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