I-P-34
Fontan術後に発症した蛋白漏出性胃腸症の 4 例
名城病院小児循環器科1),社会保険中京病院小児循環器科2),あいち小児保健医療総合センター心臓外科3),社会保険中京病院心臓血管外科4)
小島奈美子1),小川貴久1),松島正氣2),前田正信3),櫻井 一4)

【背景】Fontan型手術合併症の一つである蛋白漏出性胃腸症(以下PLE)は患者の生命予後に大きく関与すると思われるが,その原因究明や治療法はいまだ確立していない.【目的】Fontan術後PLE発症のリスクや効果的な治療法を明らかにする.【対象】1984~2005年の20年間にFontan型手術を施行した97例.内訳は男性48例,女性49例,APC 38例,TCPC 59例,手術時年齢は 1~26歳(平均6.2 ± 4.8歳).【方法】97例中PLEを発症した 4 例について術前データ,手術時年齢,術式,術後データ,PLE発症までの期間,その治療法と予後につき検討した.【症例 1】三尖弁閉鎖男性,24歳でTCPC施行.術前PAI = 373,RPI = 2.3~3.6,術後CVP 13mmHg.1 年 3 カ月後にPLEを発症したがステロイドで効果を認め経過良好である.【症例 2】三尖弁閉鎖男性,18歳でAPC施行.術前RPI = 2.2,術後CVP 13mmHg.13年後にPLEを発症し,ステロイドでいったん効果を認めるも以後ステロイド依存性に再発を繰り返している.【症例 3】単心室女性,15歳でAPC施行.術前PAI = 328,RPI = 1.2,術後CVP 15~17mmHg.10年後からAFとPLEを発症しTCPC convertおよびMazeを施行したが,以後もAFとPLEが再発し内科的治療を要している.【症例 4】左心低形成男児,3 歳でTCPC施行.術前PAI = 188,RPI = 1.8,術後CVP 18mmHg.1 年10カ月後にPLEを発症しステロイドの効果不良で胸腹水のコントロールがつかず発症 3 年後に死亡.【まとめ】Fontan型手術97例中,APC 2 例,TCPC 2 例,計 4 例(4.1%)にPLEが発症し,うち 1 例を失った.年齢や手術からの期間はさまざまであり今後も長期的フォローが必要である.また,発症のリスクはCVPや肺動脈圧だけでは説明がつかず血行動態以外の要因も考えられ,対照群との比較および文献的考察を含め報告する.

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