I-P-36
Fontan術後のワーファリン使用に関する検討―当院における過去17年間の症例より―
順天堂大学医学部小児科1),順天堂大学医学部心臓血管外科2)
大高正雄1),稀代雅彦1),織田久之1),大槻将弘1),宮崎菜穂1),田原加奈子1),秋元かつみ1),大久保又一1),山城雄一郎1),川崎志保理2)

【背景】Fontan手術は肺循環に駆出ポンプを有さない特異な血行動態を形成する.近年手術成績は向上したが,長期予後や遠隔期合併症が問題となっている.なかでも血栓塞栓症はFontan術後患者の20~30%に認められる合併症であるが,予防対策は確立していない.当院ではワーファリンの予防投与を行っていなかったが,2 例の血栓塞栓症患者を経験し,それ以来予防投与を行っている.そこで今回,当院における過去17年間で,Fontan術を施行した先天性心疾患児24例における術後血栓塞栓症について,ワーファリン投与群と非投与群に分類し後方視的に検討した.【対象】当院で1988~2005年の17年間に,Fontan手術(extracardiac conduit 67%,その他33%)を行った先天性心疾患児24例(男児15例,女児 9 例,手術時年齢 2~28歳,平均6.2歳).ワーファリン投与群16例(うちアスピリン投与を併用したもの 6 例),非投与群 8 例であった.ワーファリン内服導入後は,それまで非投与群だった症例にも投与開始した.【結果】術後ワーファリン投与されなかった 8 例中 2 例に脳梗塞を合併した.ワーファリン内服導入後は全例で血栓塞栓症は認められなかった.ワーファリン投与群では術後より内服を開始し,定期的な採血でPT-INRは2.0~3.0でコントロールした.【考察】Fontan術後のワーファリン内服に関する統一見解はなく,投与していない施設も多い.今回私どもの施設では術後のワーファリン内服は血栓塞栓症の発症予防に有用であると考えられたが,Fontan術式の違いや患児のQOL低下の問題もあり,今後さらに症例を重ね,ワーファリン予防投与の是非を検討する必要がある.

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