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フォンタン手術後遠隔期に発症した難治性の心房粗動に対し心房ペーシングが著効を示した 2 症例
広島市立広島市民病院心臓血管外科1),広島市立広島市民病院小児循環器科2),広島市立広島市民病院小児科3)
海老島宏典1),久持邦和1),鎌田政博2),中川直美2),木口久子3),二神大介1),柚木継二1),吉田英生1),大庭 治1)

フォンタン型手術術後の遠隔期に発生した心房粗動(AF)は血行動態への影響が大きく,また難治性であることが多い.カテーテルアブレーションや,経静脈的心房ペーシングは解剖学的特徴から困難であり,外科的手技が必要となることも問題の一つと思われる.今回われわれはこのような症例に対し心外膜リードを用いた心房ペーシングを導入し著効を得た 2 例を経験したので報告する.〈症例 1〉10歳,女児.左室型単心室,肺動脈狭窄に対し,B-Tシャント,グレン手術を経て,5 歳時に心内導管を用いたTCPC手術を施行された.術後徐脈傾向にあり,TCPC後 7 カ月時に心室ペーシングを開始した.TCPC術後 5 年経過時からAFが頻回に発症するようになり,ジゴシン,フレカイニドも効果なく,電気的除細動が頻回に必要となったため,開胸下に心外膜リードを心房に縫着し,心房ペーシングを施行した.術後経過は良好であった.〈症例 2〉14歳,男児.三尖弁閉鎖症に対し,肺動脈絞扼術を経て,4 歳時にフォンタン手術(右心耳-肺動脈吻合)を施行された.その後経過順調であったが,10年 4 カ月経過時にAFを発症した.電気的除細動にて洞調律に回復した.カテーテル検査では右心房圧14mmHg,肺血管抵抗5.29.右心房内にスモークサインが認められた.入院後もAFが頻回に発症し,またAF時の血圧低下が著明であったため(60mmHg),心外導管への転換(fenestrated TCPC)と心外膜リードによる心房ペーシングを開始した.術後経過は良好であった.2 症例ともに心房ペーシング開始後それぞれ12カ月,22カ月を経過したが,術後早期を除いて不整脈に関連したエピソードは 1 度も発症しておらず,Holter ECG上もAFの発生は認めていない.外科的手技が必要だが,心房ペーシングの導入はフォンタン術後の難治性AFに対する有効な治療手段であると思われる.

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