I-P-44
学童の心房中隔欠損における心房性および脳性ナトリウム利尿ペプチドに関する検討
宮崎大学医学部小児科
久保尚美,高木純一,大塚珠美,小泉博彦

【背景】ANP,BNPは成人領域で心不全の診断,治療,重症度,予後の指標として有用性が多く報告されている.小児の先天性心疾患では,病態により容量負荷・圧負荷が異なるため,疾患群ごとの検討が必要である.心房中隔欠損(ASD)では,経カテーテル的ASD閉鎖術前後に関する検討の報告がある.自己血手術可能な学童のASD症例にて,術前・周術期のANP,BNP値を測定し,心臓カテーテル検査データと検討を行った.【対象と方法】対象は心不全症状既往のない二次中隔型ASDの 8 名(年齢 8~16歳.男児 4 名,女児 4 名).術前ANP,BNP値とQp/Qs,肺血圧などの検査結果を検討した.術直後,術後 3 日目,退院時(平均;術後12.5日)の測定を行い,周術期の変化についても検討した.【結果】術前Qp/Qs ≧ 2.5のうち 1 例でANP(47pg/ml),2 例でBNP(33.8,20.1pg/ml)の軽度上昇,Qp/Qs 2.03で,収縮期肺血圧28mmHgであった 1 例でANP,BNP(40,57.6pg/ml)の軽度上昇がみられた.手術症例は 6 例(人工心肺時間平均60.5分,心室細動時間平均19.1分).ANPは術後早期に最高値となり退院時にほぼ正常化,BNPは 3 例が術後 3 日目(平均103.6pg/ml),3 例が退院時(平均123pg/ml)に最高値となり,3 カ月で正常化した.【考察】術前ANP,BNPは,Qp/Qs高値の症例で軽度上昇傾向にあり,学童ASDにおける手術至適時期を含めた状態把握に有用な指標となり得ると思われた.経カテーテル治療では,ANPは 5 分後に最高値となり,24時間後にはコントロール群と有意差なしとの報告があるが,今回の検討では正常化に約10日を有しており,心房切開の影響が考えられた.また,経カテーテル治療と比し,BNPの最高値到達および回復が遅延していた点・最高値が若干高値であった点は,心室細動下の人工心肺の影響が考えられた.学童期ASDの心室細動下手術では,BNPの顕著な上昇はなく,3 カ月で全例正常化していたことより,心筋自体への影響は少ないものと思われた.

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