I-P-45
先天性心疾患小児における脳性ナトリウム利尿ペプチド迅速キットの有用性
宮崎大学医学部小児科
小泉博彦,高木純一,大塚珠美,久保尚美

【背景】脳性ナトリウム利尿ペプチド(以下BNP)は心不全の診断・治療経過・予後の推測に有用である.しかし,現状では血漿BNP値は外注検査にて測定するのが一般的であり,検体提出から結果報告まで約 3 日間を要するため,そのtime lagが治療方針に影響を及ぼすことがあり得る.また,検体量が全血で約 3ml必要なことは採血困難な乳幼児において障害となり得る.微量検体量(50μl)で,かつ17分間というわずかな時間で結果が得られるBNP迅速キットが近年利用できるようになった.今回,慢性心不全の急性増悪を繰り返すチアノーゼ性心疾患姑息術後の幼児例,また,他の基礎疾患を有し,二次的に心機能低下を来した乳児例において,BNP迅速検査を行うことにより治療方針の決定がスムーズに行えた 2 症例を中心に報告する.【症例 1】純型肺動脈閉鎖,両側mBTシャント術後の 1 歳女児.慢性心不全のため多剤併用による抗心不全治療中.1 歳 2 カ月時の血漿BNP値は370pg/ml.1 週間後に嘔吐にて再入院.BNP迅速検査値は641pg/mlと上昇.心不全増悪と診断し,抗心不全療法を強化することによりBNP値の改善(272pg/ml)を認めた.また,1 歳 4 カ月時にも嘔吐にて来院するもBNP値170pg/mlであり心不全の急性増悪ではないものと判断.感染性胃腸炎として補液療法のみで状態の改善を認めた.【症例 2】多発性嚢胞腎,高血圧の 3 カ月女児.前医にてCaブロッカーを用いた降圧治療が導入されたが.左室機能は著しく低下.BNPは2,000pg/ml以上と測定感度を超えていた.直ちにCaブロッカーを中止,ARB,ACE-Iを中心とした治療に変更.心機能は改善し,約 6 週間後にはBNP値188pg/mlまで低下した.このほかにも迅速検査を用いて,入院中の心不全を有する先天性心疾患児の治療方針を速やかに決定した結果,それぞれ良好な経過が得られた.【結語】BNP迅速検査は乳幼児における心不全診断,ならびに治療方針の決定に有用である.

閉じる