I-P-46
Amplatzer Septal Occluderを用いた心房中隔欠損症のカテーテル閉鎖術後の両心室機能―Tei indexを用いた前方視的検討―
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科1),岡山大学医学部・歯学部附属病院循環器疾患治療部2),岡山大学大学院医歯薬学総合研究科小児科3)
板垣晶子1),赤木禎治2),大月審一3),岡本吉生3),日置里織3),笠原真悟1),石野幸三1),佐野俊二1)

【背景】心房中隔欠損症のカテーテル治療では人工心肺の影響なく左右短絡血流を消失させることが可能である.短絡が消失することにより右心室では前負荷の軽減が左心室には前負荷の増大が短時間に引き起こされる.このような急速な変化に両心室がどのように適応化していくのか,詳細な検討は少ない.【目的】カテーテル治療前後の左室および右室の拡張末期系,ejection fraction,Tei indexの変化を前方視的に検討すること.【対象】当院で心房中隔欠損症のカテーテル治療を実施した症例中,術前からの評価が可能であった 5 症例.年齢は12~64歳(平均42歳),ASDの欠損孔径は17~21mm(平均19mm),Qp/Qsは2.1~3.2(平均2.4).これらの欠損孔に対して22mm(2例)もしくは24mm(3 例)のAmplatzer Septal Occluderで閉鎖術を行い,全例24時間以内に完全閉鎖を確認した.経胸壁心エコーを用いた心機能評価は術前,術後24時間,1 カ月に実施した.【結果】左室拡張末期径は術前36.0mm,術後24時間40.4mm,術後 1 カ月42.1mmと有意に拡大したが,左室Tei indexはそれぞれ0.29,0.31,0.28と有意な変化を認めなかった.一方,右心室拡張末期径は術前35.1mm,術後24時間31.7mm,術後 1 カ月29.9mmと有意に縮小し,同時に右室Tei indexはそれぞれ0.23,0.26,0.36と経過とともに増加した.カテーテル閉鎖術に伴う不整脈,心不全症状を認めたものはなかった.【結論】カテーテル治療後短期間に認められた両心室間の拡張末期径の変化に対するそれぞれの心室の適応パターンは異なっていたが,いずれも正常範囲内の変化であった.心血行動態上,心房中隔間短絡血流消失に伴う心室収縮能,拡張能の変化は許容範囲内であるために実際に臨床上に影響を及ぼすことは少ないと思われるが,より重度の病変では治療後の管理方針に影響を及ぼす可能性がある.

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