I-P-47
Linezolidが有効であったMRSAによる感染性心内膜炎・人工血管周囲膿瘍の 1 例
北里大学病院胸部外科
友保貴博,宮地 鑑,宮本隆司,中島光貴,小原邦義,吉村博邦

【目的】感染性心内膜炎・人工血管周囲膿瘍に対しLinezolidが著効した 1 例を報告する.【症例】4 カ月男児.心室中隔欠損症(Swiss-cheese型),左室低形成,大動脈縮窄症の診断にて生後 3 カ月時に大動脈縮窄解除術,肺動脈絞扼術を施行したが,両心室治療が不可能なため単心室治療を目的として 4 カ月時にDamus-Key-Stansel吻合,Rt. B-T shunt(4.0mm),PA plasty,RV-PA conduit(PTFE 6.0mm)を施行した.1 カ月後炎症反応の上昇,血液培養よりMRSAが検出され,心エコー・シンチグラフィ・胸部CT上MRSAによる感染性心内膜炎・RV-PA conduit周囲膿瘍と診断され,手術となった.【手術所見】胸骨正中再切開よりアプローチ,前縦隔および心嚢内に白色膿を認めた.RV-PA conduit中枢側吻合部は感染により脆弱化し,摘出したRV-PA conduit内全体に疣贅が認められた.右室前面を縫合閉鎖し,Rt. B-T shuntは 4~5mmに変更して手術終了とした.なお,B-T shuntへの感染は認めなかった.【術後経過】縦隔内持続洗浄・抗生剤投与(VCM・ARB・FMOX)等により術後 6 日目に洗浄排液培養陰性所見を得て胸骨閉鎖.2 日後再び発熱,MRSA再感染・VRE感染を疑いlinezolidを使用した結果,感染徴候が改善し退院した.【考察】linezolidはオキサゾリジノン系に属する新規抗菌薬で日本ではVREの治療薬として承認されている.欧米ではMRSAなどの耐性球菌に対しても使用されている.今回の症例はMRSA感染に対してVCMの効果が乏しく,VREではなかったがlinezolidを使用し著効した感染性心内膜炎・人工血管周囲膿瘍の本邦初報告例であると思われた.

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