I-P-49
脳梗塞を合併した急性心筋炎の 1 例
関西医科大学小児科
吉村 健,寺口正之,池本裕実子,金子一成

【はじめに】今回,われわれは,完全房室ブロックを伴った急性心筋炎を発症し,その後,脳梗塞を合併した症例を経験したので,報告する.【症例】5 歳の男児.入院 2 日前から顔面浮腫と尿量減少を認め,近医での胸部X線写真で心拡大と胸水貯留を指摘され,当科へ紹介入院.入院時の心拍数は78/分で,顔面浮腫と肝腫大がみられた.血液検査で心原性逸脱酵素の上昇を,また心電図上,完全房室ブロックを認めた.心エコー上,左室駆出率は正常であったが,左室前壁と乳頭筋の輝度亢進があった.心腔内に血栓様エコーはみられなかった.心筋炎と考え,イソプロテレノール持続静注と利尿薬静注とともに,入院 2 日目に免疫グロブリン大量静注療法(2g/kg)を行った.これらの治療にて顔面浮腫・肝腫大などの心不全症状は改善したものの,完全房室ブロックは持続した.入院 8 日目に突然,脳梗塞(左中大脳動脈穿通枝領域)を発症し,右不全麻痺を来した.入院27日目に心筋生検を施行し,メ急性心筋炎モの病理診断が得られたが,その原因は特定できなかった.【考察】一般に心筋炎において不整脈の合併は少なくないが,完全房室ブロックの合併はまれである.既報例では約 2/3 の症例において発症から 7 日以内に完全房室ブロックから正常洞調律に回復しているが,われわれの症例は回復がみられず,また,脳梗塞を合併した.各種疾患に対する免疫グロブリン大量静注療法には脳梗塞などの血栓症がまれに合併することがあると報告されており,心不全治療も伴い,血栓症が生じた一因となっているもとのと考える.したがって,心筋炎に完全房室ブロックを合併した場合,ことに免疫グロブリン大量療法を行う場合には,脳梗塞予防に関する治療の必要性があると思われた.

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