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心タンポナーデを伴ったHaemophilus influenzae type b(Hib)による化膿性心外膜炎の 1 例
高知大学医学部小児思春期医学1),高知大学医学部呼吸循環再生外科学2),独立行政法人国立病院機構高知病院小児科3)
寺内芳彦1),高杉尚志1),矢野哲也1),細川卓利1),前田明彦1),藤枝幹也1),旗  厚2),割石精一郎2),脇口 宏1),笹栗志朗2),白石泰資3)

【はじめに】化膿性心外膜炎は抗生剤の普及によりまれになったが,治療が遅れると致死的となる重症細菌感染症である.また,Haemophilus influenzae type b(Hib)は,欧米ではワクチンが導入されているが,わが国ではいまだに導入されていない.今回,われわれは,Hibによる化膿性心外膜炎の 1 例を経験したので報告する.【症例】生来健康な 3 歳男児.発熱,咽頭痛,頸部痛,背部痛を主訴に,3 病日に紹介医を受診し,抗生剤を処方された.発熱は持続し,多呼吸を伴うようになり,6 病日に胸部X線写真で心拡大,心エコーで心嚢液貯留を認めたため当科紹介入院となった.入院時,顔色不良,不穏状態で,頻脈,多呼吸,distant heart sound,肝腫大,頸静脈怒張を認めた.血液検査で炎症反応が高値であり,胸部X線写真上の心拡大,心電図上のST上昇を認めた.心エコーで心全周性の心嚢液貯留を認め,心タンポナーデを伴った化膿性心外膜炎と診断した.剣状突起下アプローチで,緊急心嚢切開ドレナージ術を施行し,約150mlの黄褐色の心嚢液が排出された.循環動態は安定したが,心エコー上,心全周性にドレナージされない厚い心嚢内膿瘍が残存したので,1 週間後に左側開胸で心嚢内膿瘍除去術,心膜開窓術を施行し,計 4 週間の抗生剤静注を行った.術後経過観察を行っているが,収縮性心膜炎の所見を認めていない.【結語】化膿性心外膜炎は,まれな疾患であるが,心タンポナーデを呈し急激な経過をたどる重症細菌感染症であり,本邦でも早期のHibワクチンの導入が望まれる.

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