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先天性心疾患児のRSウイルス感染に対するパリビズマブの効果と臨床的問題点
大阪市立総合医療センター小児循環器内科1),大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科2),大阪市立総合医療センター小児救急科3)
村上洋介1),川崎有希1),江原英治1),杉本久和1),瀬尾浩之2),上野高義2),川平洋一2),西垣恭一2),塩見正司3)

【背景と目的】2005年10月より先天性心疾患(CHD)に対するパリビズマブの臨床使用が可能となりその効果が期待されている.しかし,保険適応と日本小児循環器学会のガイドラインにはその使用基準について若干の相違がある.2004年シーズンと2005年シーズンのRSウイルス感染(RSV)の入院症例を後方視的に検討し,パリビズマブの有効性と問題点を検討する.【対象】2004年10月~2005年 3 月(2004年群)と2005年10~12月(2005年群)にRSVのために入院治療を行った小児87例.【施設】感染症病棟を有する総合病院併設型小児総合医療施設.【結果】2004年群のRSV入院患者数は39例(0.79 ± 0.62歳)で基礎疾患を有したものが21例,そのうちCHD例は11例であった.11例中,10例は24カ月以内で血行動態異常を有しパリビズマブの適応例であった.HLHSを含む最終手術待機例が 6 例,術後投薬中が 4 例であった.2004年群全体で基礎疾患のない 1 例が人工呼吸を受けたが,CHD例では人工呼吸例はなく,手術待機例はその後,最終手術に到達した.2005年群は48例で基礎疾患を有したものは22例,そのうち10例がCHD例であった.3 例のみがパリビズマブ適応で 2 例に使用されていたが,1 例は術後早期例でパリビズマブ未使用であった.パリビズマブ使用中で入院した 2 例は在宅酸素使用例であったが重篤化せず軽快した.術後で明らかな血行動態異常はないが気管軟化症による呼吸障害例が 1 例あり,パリビズマブ未使用であった.2005年群全体で 2 例の人工呼吸例があったが 1 例はCHD術後で血行動態異常のないCHARGE症候群であった.【結語】パリビズマブの使用により2005年10月以降,CHD重症例のRSV入院は減少した.術後例に対する注意が必要でパリビズマブの積極的使用が望まれる.

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