I-P-54
肺動脈性肺高血圧に対するボセンタン内服治療の経験
大阪大学大学院医学系研究科小児科学1),大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科2)
小垣滋豊1),市川 肇2),那須野明香1),高橋邦彦1),成田 淳1),市森裕章1),福嶌教偉2),澤 芳樹2),大薗惠一1)

【背景】エンドセリン受容体ETAとETBの両者に非選択的に結合拮抗するボセンタンが,日本でも肺動脈性肺高血圧症に使用可能となった.【目的】種々の病因による肺高血圧に対するボセンタン内服治療の安全性と効果について検討する.【方法】肺動脈性肺高血圧を合併した 8 例について,ボセンタン内服開始前後で胸部X線,心電図,心エコー,血液検査を施行.慢性効果は,心胸郭比,心エコー所見,ANP,BNPなどの項目について検討した.【対象】疾患は門脈性肺高血圧症(PPHTN)2 例,Eisenmenger症候群(ES)2 例,ファロ-四徴症術後(TF)2 例,ASD + VSD + PS術後 1 例,両大血管右室起始症術後 1 例.年齢は 3 歳~30歳(中央値14歳),男 4 例,女 4 例.体重は8.8~48kg.【結果】服薬開始前エンドセリン血中濃度は1.53~4.14(平均2.8),cGMPは3.9~9.8(平均7.2).併用薬剤はフローラン 2 例,プロサイリンまたはドルナー 3 例.8 例中 2 例(PPHTN,ES)は,服薬開始後 5 日で原病によると思われる合併症(下血および喀血)を併発したため投与を中止.他の 6 例の観察期間は 1~6 カ月,1 日投与量は1.1~3.4mg/kg.副作用は顔面紅潮,頭痛,筋肉痛を認めたが軽微であり,血液検査上も肝機能障害や貧血などの副作用は認めていない.推定右室圧(TR)は 3 例で低下傾向がみられ,うち 2 例で心胸郭比の増加を認め 1 例で日常生活活動が著明に改善した.TRが不変の 2 例のうち 1 例でANP/BNPの低下を認めた.TRが上昇した 1 例ではANP/BNPの上昇がみられ臨床症状も不安定であった.【結語】種々の肺動脈性肺高血圧に対してボセンタン内服治療を試みた.重篤な副作用なく日常生活の改善が得られる症例から,症状の不安定な症例まで個々の例で効果はさまざまであった.他の肺高血圧治療薬とともに今後注意深く適応について検討を要すると思われた.

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