I-P-55
特発性肺動脈高血圧症へのシルデナフィルおよびボセンタンの使用経験
千葉大学大学院医学研究院小児病態学
安川久美,本田隆文,遠山貴子,東 浩二,江畑亮太,寺井 勝

【目的】近年,肺動脈高血圧症(PAH)における血管平滑筋細胞内シグナルの解明が進み,エポプロステノールやシルデナフィル,ボセンタンなどの新たな治療薬が臨床応用されている.エポプロステノール持続投与中の特発性肺動脈高血圧症(IPAH)児におけるシルデナフィルとボセンタンの使用経験を報告する.【症例】13歳女児.2001年 2 月(8 歳)に失神にて発症しIPAHと診断された.入院時の肺動脈収縮期(PA)圧は90mmHg,WHO肺高血圧機能分類はクラス 4 であった.酸素吸入,ベラプロスト内服,DOB・オルプリノロンの持続静注を開始したが,2002年 7 月(9 歳)に 4 回目の失神を経験し,エポプロステノール持続投与を開始した.その後PA圧は50mmHgまで低下,機能分類もクラス 2 まで改善した.2004年 6 月に在宅療法に移行,養護学校への通学など活動性が増したため,当施設の倫理委員会で承認後,QOLの向上目的にて2005年 1 月(11歳)にシルデナフィルを開始した.5mg/日(体重50kg)より開始,1 カ月後に50mg/日まで増量したが,服薬後の顔のほてりがみられたのみで,体血圧の上昇(収縮期圧で90台から110台へ)が得られ,機能分類もクラス 1 まで改善した.2005年11月(12歳)にはボセンタンを6.25mg/日より開始,軽度頭痛訴えたのみで,2 週間後に62.5mg/日まで増量し,肝機能障害などはみられなかった.投与開始後,PA圧は40mmHgまで低下,歩行距離も増加した.現在ボセンタン増量中である.【結語】PAHへのエポプロステノール,シルデナフィル,ボセンタンはそれぞれ有効性が報告されている.しかしながら,小児における投与や薬剤の併用療法については報告が少ない.今回これら 3 剤の併用療法を経験したが,大きな副作用はなく,PA圧の低下や機能分類の改善など有効な結果が得られた.小児IPAHにおけるシルデナフィルやボセンタンの安全性と有効性についてはさらなる使用経験が必要である.

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